2015年の相続税改定により、相続税の対象者は前年度の83%増加しています。かつては相続する不動産といえば、戸建ての家や土地が中心でしたが、今後マンションなどの集合住宅を、相続するケースが増えていくでしょう。
マンションは戸建ての住宅とは、相続税の評価額の計算方法が異なります。相続で受け取るマンションが課税対象になるのか、相続税はいくらなのか疑問を持つ人もいるでしょう。
また、マンションを相続しても住む予定がない場合、所有していれば固定資産税や管理費などが掛かるため、売却を視野に入れるケースも多いのではないでしょうか。
そこで今回は、マンションを相続した場合の相続税の計算方法や、住まずに売却する際の注意点などを解説していきますので、参考にしてみてください。
マンションの評価額を全般的に知りたい方は「マンションの評価額がラクにわかる!相続税評価額の調べ方や計算方法を解説」をご覧ください。

- 監修梅澤 康二
東京大学卒業後、法律事務所に入所。2014年8月からプラム綜合法律事務所を設立。労務、一般民事、債務整理や相続問題など様々な法律相談に対応している。
【保有資格】弁護士
【URL】プラム綜合法律事務所
相続するマンションの相続税評価額を知ろう
不動産にかかる相続税を計算する際には、まず相続税評価額を知る必要があります。
相続税評価額とは、相続税を計算する基準となる価格です。
マンション評価額は、「土地の評価額」と「建物の評価額」を計算し、合算することで求められます。
- 土地評価額を計算
- 建物評価額を計算
- 二つの評価額を合算⇒マンションの評価額となる
土地評価額を計算する
土地の評価額は基本的に「路線価方式」と呼ばれる方法で計算されます。
(場合によって、「倍率方式」「地積規模の大きな宅地の評価」という方法が用いられます。)
分譲マンションの場合、それぞれの部屋の所有者はマンションについて区分所有権を有することになります。相続時に問題となるのはこの土地及び建物に係る区分所有権の価格です。
詳しく説明すると、マンションは、専有部分と呼ばれる区分所有部分と、マンション玄関や通路、庭などの共用部分があります。相続税評価額は、専有部分についての評価額が問題となりますので、この専有部分の価値を算定する必要があるのです。
敷地権の割合は、専有部分の床面積を、全ての専有面積の床面積で割って算出されており、売買契約書や不動産登記に明記されています。
所有する土地の評価額を計算する手順
- マンション全体の土地評価額を調べる
- 敷地権割合をかける
敷地権割合を確認するには
敷地権割合は、不動産登記から確認するのが最も簡単でしょう。
敷地権の割合といった欄に「〇〇分の△△」と書かれている部分がそれです。
また、敷地権割合は売買契約書や重要事項説明書にも明記されているはずです。もし紛失している場合は、売主や仲介した不動産会社、又はその両方に許可を得たうえでコピー・再発行をしてもらいましょう。
1.全体の土地評価額を調べる
- 『国税庁:路線価図・評価倍率表』で路線価を調べる
- 路線価を土地面積でかける
路線価は、国税庁が公表する路線価図から調べることができます。
ページ内で地図から地域を選択できるので、順番にクリックしていきます。
地名まで表示されたら、『路線価図ページ番号』を順番に見ていき自分の土地を探します。
道路にひかれた矢印に『110D』のような数字とアルファベットが書かれていますが、この数字部分が路線価で、千円単位で表示されています。
110の場合は110,000円となります。
該当する土地に接している道路に表示されている路線価を確認してみましょう。
なお路線価は1㎡あたりの評価額であるため、土地全体の面積をかけていきます。
例えば、マンション全体の面積が1500㎡の場合で、先ほどの路線価『110』とかけてみましょう。
2.敷地権割合をかける
売買契約書で調べた敷地権割合を先ほどの数字にかければ、区分所有する土地の評価額が求められます。
後ほどシミュレーションしてみます。
建物評価額を計算する
建物の評価額は、特別な計算は不要で固定資産税評価額と同じです。
建物の評価額となる固定資産税評価額を知るためには、毎年1月1日時点での不動産所有者に送られてくる固定資産税の納税通知書を確認しましょう。
その中の課税明細書を見るとマンションの固定資産税評価額が分かります。
下の画像の様に、『家屋』と書かれた部分が固定資産税評価額です。

なお、課税明細書は発行する地域によって表記が異なります。
見方がわからない方は、「課税明細書 見方 (地域名)」で検索してみましょう。
もし、課税明細書を紛失してしまった場合は、マンションを管轄しているエリアの市役所で所有者本人が確認書類を持って手続きすれば固定資産税評価額証明書を入手することができます。
そして、土地と建物の評価額を合算し、マンション相続税評価額の計算は終了です。
シミュレーションしてみよう
以下の条件のマンションで実際に計算してみましょう。
- 土地面積:2000㎡
- 路線価:300(1㎡あたり30万円)
- 敷地権割合:5,000,000分の10000
- 建物の固定資産税評価額:1,200万円
1.土地評価額の計算
まずはマンションの土地全体の評価額を求めます。
=600,000,000×(10,000÷5,000,000)
=1,200,000円
2.建物評価額を調べる
今回は、課税明細書に固定資産税額1,200万円と表記されていたとします。
建物評価額はそのまま1,200万円となります。
3.土地・建物の評価額を合算
相続税評価額だけでは相続税を計算できない
ここまで相続税評価額を計算してきました。
相続税評価額に対し、相続税が課税されるのは間違いないのですが、この情報だけでは相続税を求めることができません。
相続税計算はすべての相続財産の合計額が必要
相続税は、マンションだけではなくすべての相続財産の合計額がないと計算することができません。
相続税の税率は10%~55%と開きが大きく、相続する財産総額によって税率が決定するためです。
財産には『プラスの財産(正)』と『マイナスの財産(負)』が存在します。
例えば、マンションや現金のようなプラスの財産もあれば、借金のようなマイナスの財産も相続対象なのです。
そのため、プラスの財産の合計からマイナスの財産を差し引いたものが相続財産の総額になります。
基礎控除『3,000万円+(600万円×法定相続人)』以下は非課税
相続税を計算する際は、基礎控除を考慮しなければいけません。
基礎控除とは、相続財産の総額から3,000万円を差し引くことができるもので、法定相続人1人につきさらに600万円がプラスされます。
法定相続人数 | 基礎控除額 |
---|---|
1人 | 3,600万円 |
2人 | 4,200万円 |
3人 | 4,800万円 |
… | … |
要は、少なくとも相続財産の総額が3,000万円以下であれば相続税は発生しないことになります。
相続税の節税方法を覚えておこう
マンションを相続した場合、控除が適用されるケースがあります。どのような控除があるのか理解をし、自分が適用されれば十分に活用することで、節税対策にもなります。まずは、控除の種類についてチェックしておきましょう。
配偶者控除による相続税の節税
配偶者控除とは、夫婦のどちらかが亡くなってしまった場合、残された方が相続する財産に課税してしまうと今後の生活に大きな支障をきたす可能性があるため、夫婦間で相続する場合には配偶者の法定相続分又は1億6,000万円のいずれか多い金額までは課税対象としないというものになります。
配偶者が相続する財産が1億6,000万円以下だった場合、どのような相続の仕方をした場合でも相続税は0円になります。また、配偶者の相続分が法定相続分の範囲内であれば、いくら相続しても相続税はかからないということです。
例えば2億円の財産を持っている夫が亡くなった場合、妻の法定相続分は2分の1である1億円です。1億円と1億6,000万円では、1億6,000万円のほうが多い金額になるため、妻は1億6,000万円までであれば相続しても相続税がかからないということになります。
小規模宅地等の特例による節税
小規模な宅地においては、一定の要件を満たしている土地であれば、その宅地の評価額を最大8割減額できるというものになります。大きな減額割合だからこそ、適用条件が厳しく複雑なものになっているので注意しましょう。
一定の要件とは、主に3種類に分類されます。住んでいた土地であること、事業をしていた土地であること、貸していた土地であることが挙げられます。それぞれにさらに細かな適用条件が定められています。
住んでいた土地(特定居住用宅地等)
相続した土地が、亡くなった人の住んでいた土地で、かつ、配偶者または一定の要件を満たす人が相続した場合に該当します。
例えば、亡くなった人(被相続人)と相続人が同じ建物に同居していることが要件の一つとされています。なお、亡くなる直前は老人ホームなどに入居していて実際には住んでいなかった場合、要介護認定を受けていたか、所定の介護施設に入居しているかどうかなども判断要素となります。
噛み砕いて言えば、被相続人が要介護認定を受けて老人ホームなどに入居していた場合、被相続人の死亡時には実際に同居していなくても特例の適用を受けることができる可能性があるということです。
また、被相続人と同居していなくても、生計が同一の親族であれば条件を満たす可能性があります。
小規模宅地等の特例では、上限面積300平米、減額割合80%と設定されています。例えば、相続税評価額が1億円、地積200平米の場合、1億円✕80%で小規模宅地等の特例適用額は8,000万円となります。
しかし、相続税評価額4,000万円、地積400平米と上限面積を超えた場合は、4,000万円✕300平米/400平米✕80%となり、小規模宅地等の特例適用額は2,640万円となります。
事業をしていた土地(特定事業用宅地等・特定同族会社事業用宅地等)
所得税における事業所得を得ている事業を営んでいることが条件となります。そして、相続したあとも同じ事業を申告期限まで継続する必要があるので注意しましょう。
上限面積は400平米、減額割合は80%です。
貸していた土地(貸付事業用宅地等)
これに該当する例としては、貸駐車場や賃貸アパートの敷地などが挙げられます。ここでの適用ポイントは、相当の対価で貸付しているかという点です。親族だからといって破格の安さで貸付をしていた場合、特例が適用されないケースもあります。
所有者が亡くなる前3年以内に貸付を行った土地については、貸付事業用宅地に該当しないので注意しましょう。上限面積は200平米、減額割合は50%です。
賃貸マンションにして節税
実は、投資目的の賃貸マンションとして他人に賃借していた場合は、相続税評価額を計算する方法が変わります。
賃貸とする場合、そのマンション第三者が利用する形になり、その土地は『貸家建付地』とみなされます。
こういった賃貸物件では、その土地の権利がすべて自分にあるわけでなくなり、『借地権』や『借家権』などが加味されて土地の評価額が減額されるのです。
複雑な計算になるため詳しくは『マンションの経営で節税することは可能か?他の物件との違いも比較』をご覧ください。
相続手続きの進め方
ここで簡単に相続手続きの流れを把握しておきましょう。
あらかじめ全体像を把握しておくことで、事前の対策を打つことができますし、いざ相続開始のタイミングで慌てふためくことがありません。
- 遺言書の確認
被相続人の遺言書を確認する。指定された相続内容があるかを確認します。 - 相続人の確認
戸籍謄本から血縁関係を調べ、法定相続人を確認します。 - 相続財産の把握
プラスの財産、マイナスの財産をすべて把握します。 - 相続放棄・限定承認
相続を放棄したり、限定承認をする場合は原則として相続開始から3ヶ月以内に家庭裁判所での手続が必要です。 - 遺産分割協議
遺言書がない場合は、相続人どうしで遺産を分割するための話合いを行います。 - マンションの相続登記
相続登記(名義の変更)に期限はありませんが、所有者が被相続人のままでは売却などをすることはできません。
相続マンションの売却なら一括査定サイトがおすすめ
マンションなどの不動産と呼ばれるものは、不動産会社から査定を受け、その価格を参考に第三者に売却するのが一般的です。
売却金額は、不動産会社による査定が大きな参考値となるため、適切な価格の査定額が必要となります。
不動産会社が行う査定には厳格なルールがあるわけではないため、会社ごとに何百万もの差が出ることがよくあります。
その為、一括査定サイトを利用して複数社の不動産会社に査定を依頼し、比較検討することでそういったリスクを回避することができます。
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もっと詳しく知りたい方は、 「マンションの評価額の調べ方を解説!評価額が高いとどうなるか」 という記事や、 「マンションの火災保険の建物評価額とは|算出方法や注意点を解説」 という記事もご覧ください。
相続する際のマンション評価方法は?
相続する際のマンション評価額は、「相続税評価額」と言います。相続税評価額は、マンション区分所有権の土地部分と建物部分を合計して求めることができます。区分所有する土地部分の価格は、マンションの土地全体の価格に敷地権の割合をかけて計算します。敷地権割合を知る方法について気になる方は、マンションを相続する時の評価方法をご覧ください。
建物部分の相続税評価額を計算する方法は?
建物部分の相続税評価額を知るには、固定資産税評価額を知ると良いでしょう。固定資産税評価額は、建物部分の相続税評価額と同じだからです。固定資産税評価額を知る方法について知りたい方は、建物部分の相続税評価額を計算をご覧ください。
土地部分の相続税評価額を計算する方法は?
土地部分の相続税評価額を計算する方法は2つあります。路線価方式と倍率方式です。路線価方式は、マンションが市街地にあるケース。倍率方式は、マンションが郊外にあるケースなど場合によって使う式が違います。それぞれの具体的な計算方法について気になる方は、土地部分の相続税評価額を計算をご覧ください。
マンションを相続する時、相続税は節税できる?
できます。具体的には、相続税にかかわる基礎控除や配偶者控除を使うことで節税することができます。実際の控除額、控除計算方法に関して知りたい方は、マンションを相続するときの控除を知って節税しようをご覧ください。