あらゆる災害による被害額を負担してくれる火災保険。
万が一の際に、補償してもらう金額を『保険金額』といいますが、この金額を正しく設定するには『マンションの建物部分の評価額』を求める必要があります。
この記事では、評価額と保険金額の関係性、評価額の計算方法を解説していきます。
読了する頃には、適切な保険金額を設定することができるようになります。

保険金額の基準となるマンションの評価額
まずは保険金額を決定する基準となる『評価額』の意味を理解しましょう。
評価額とは建物の再調達費用(新価)
ここでいう評価額とは、その建物を今現在新たに作り直す場合にかかる費用のことで、再調達価額(新価)と呼ばれます。
建物の価値は、新築時から年々価値を落としていきますが、新価ではそれを考慮しません。
反対に、新価の価格から経年による消耗分を差し引いたものを時価と呼びます。
通常、不動産の販売価格には土地の価格が含まれていますし、その時々の物価によって再調達にかかる費用は変化します。
この3,500万円が新価であり、現在の評価額です。
無駄なく十分な保険金額をもらうには『全部保険』
保険金額は保険会社が定める一定の範囲内で任意の金額を設定することができ、設定した保険金額によって以下の3つに分かれます。
- 保険金額は評価額と同じ『全部保険』
- 保険金額が評価額より低い『一部保険』
- 保険金額が評価額より高い『超過保険』
保険料の払い過ぎを起こさず、万が一の際に十分な補償を受けるには『全部保険』を設定する必要があります。
- 建物評価額:建物の価値を表す価額で、保険金額を設定する際の参考として使われる。新価と時価という考え方があり、十分な保険金額を得るには新価で評価額を計算する必要がある。
- 保険金額:万が一の際に保険会社から支払われる金額の上限額。契約時に設定する。
- 保険料:契約者が保険会社に支払う金額。契約に基づいて、月額や年額で設定されることが多い。保険金額の設定によって保険料も変わる。
評価額同額を保険金額にする『全部保険』
全部保険は、新価の評価額をそのまま保険金額とする契約方法です。
保険契約時に適正な新価を評価しその同額を保険金額とすることで、万が一全焼した場合でも、再建築に必要な金額が保証されます。
評価額よりも少ない金額を保険金額にしている『一部保険』
保険金額は保険会社が定めた評価額を基準に一定の範囲内で自由に設定できます。
評価額を下回る額を保険金額とすることを一部保険といいますが、この場合は保険料を抑えられるものの、万が一全焼をした場合に再建築に必要な費用を補償してもらえません。
その結果、焼失した建物の住宅ローン返済と、建て替えのために新たに借り入れする住宅ローンの2重の支払いが発生するリスクがあります。
評価額よりも高い金額を保険金額にしている『超過保険』
評価額よりも高い保険金額を設定してしまっている場合を超過保険といいます。
この場合、万が一全焼した際でも受け取ることができる保険金はあくまでも新価が限度額となります。
超過してかけた分はただ無駄な保険料を払っていることになります。
マンションの再建築費の評価は専有部分だけ
火災保険の補償額を決める建物評価額は、マンションの場合だと専有部分の再建築費用で算出します。専有部分とはマンションのうち、自ら居住する住戸内の部分のことであり、開放廊下やエレベーター・会議室などの住民全員が使用する部分は共用部分となります。
マンションの購入価格には、土地や共用部分の価格が含まれているので、ここでいう建物評価額はもっと低い金額になります。
火災保険の建物評価額を計算してみよう
ここからは、建物の評価額を実際に計算する方法を解説していきます。
時価でなく、新価基準での建物評価額を計算していきますので注意してください。
新築戸建て
- 建物購入費がわかる場合
- 建物購入費がわからない場合
中古物件
- 築年数と建築時の価格がわかる場合
- 築年数と建築時の価格がわからない場合
マンション(新築・中古)
新築戸建の計算方法
新築戸建の場合は、建物の購入価格がわかるか否かで計算方法が異なります。
建物の購入価格がわかる場合
新築の場合は、建物の購入価格をそのまま新価として考えます。
あくまでも、土地などを省いた建物のみの購入金額であることに注意しましょう。
建物の購入価格がわからない場合
土地価格と建物価格の分別がつかず、先ほどの様に建物の評価額がわからない場合は、消費税から逆算し求めることができます。
というのも、そもそも土地には消費税がかからないのです。
計算方法は以下の通りです。
*2019年10月1日以降は消費税10%。それ以前は8%となります。
中古戸建の計算方法
建築年と建築時の価格がわかる場合
建築年と建築時の建物価格がわかる場合は、年次別指数法を利用し計算します。
年次別指数法は、中古戸建が新築された当時から現在までの建築費単価の推移を考慮し、新価を計算する方法です。
建築年と建築時の価格がわからない場合
建築年と建築時の価格がわからない場合は、新築費単価法を利用し計算します。
新築費単価法というのは、その建物がある所在地や建物の構造から1平方メートルあたりの標準的な金額(新築費単価)を延床面積でかけて計算する方法です。計算するときには下記の式で計算できます。
戸建ての場合、建物の構造によって、2つの構造に分かれます。H構造・・・木造モルタル塗りなど一般的な木造戸建等
T構造・・・H構造以外の戸建等、省令準耐火・(順)耐火構造の戸建て
例えば、神奈川県のT構造戸建て、延べ床面積100㎡、新築費単価が24万5千円だった場合
『24万5千円×100㎡=2,450万円』となります。
マンションの計算方法
マンションの場合も、中古戸建ての場合と同様、購入時の建物価格から年次別指数を用いて評価額を算出する方法もありますが、専有部分のみの価格を割り出す必要があることから、一般的には新築費単価法が用いられます。
建物評価額(新価)=新築費単価×専有面積
計算する際の注意点
マンションの建物評価額を計算する際の専有部分の面積は、管理組合の規定によって共有部分と専有部分の境界線の場所が変わるので注意が必要です。境界線の引き方には、上塗り基準とよばれる壁は共用部分と考える方法と、壁の中心部を境界線と考える壁芯基準があります。
どちらの方法で専有面積を計算するかで、面積がかわります。境界線の設定は管理組合によって異なります。面積がかわると保険金額も変わるので、事前に管理組合に問い合わせておきましょう。
家財の評価額を求める方法
火災保険は建物だけでなく、家財にも適用させることができます。
家財でも、新価(再調達価格)を正しく確認しておかないと、超過保険・一部保険の状態になってしまいます。
家財の量は相当ですので、一つ一つ計算していくのは大変です。
そのため、保険会社の簡易評価表(目安表)を利用して新価を決定する方法がよく用いられます。
- 簡易評価表を基に目安額を決める
- 骨董などの貴重品は明記物件とし個別に求める(上限額あり)
1.簡易評価表をもとに目安額を決める
下の画像は、損保ジャパンの家財新価の目安表です。
家族構成と年齢に応じて、およそどれほどの家財(評価額)があるかを一覧にしています。
家族構成 | 2名 大人のみ | 3名 大人2名 子供1名 | 4名 大人2名 子供1名 | 5名 大人2名 子供3名 | 独身世帯 | |
---|---|---|---|---|---|---|
世帯主の年齢 | 25歳前後 | 490万円 | 580万円 | 670万円 | 760万円 | 300万円 |
30歳前後 | 700万円 | 790万円 | 880万円 | 970万円 | ||
35歳前後 | 920万円 | 1,000万円 | 1,090万円 | 1,180万円 | ||
40歳前後 | 1,130万円 | 1,220万円 | 1,310万円 | 1,390万円 | ||
45歳前後 | 1,340万円 | 1,430万円 | 1,520万円 | 1,610万円 | ||
50歳前後 (含以上) | 1,550万円 | 1,640万円 | 1,730万円 | 1,820万円 |
こういった目安を知ると評価額を自分で計算する必要がなく、極端な一部保険や超過保険となるリスクを抑えることができます。
2.骨董などの貴重品は明記物件とし個別に求める
こういった簡易評価表には、骨董品や美術品、宝石類など高額なものは含まれていません。
そのため、高額な貴金属等は個別に新価を求める必要があります。(新価は、その物を現在購入する場合の価格です。)
新価を求めたら、明記物件として事前に申告する必要があるのですが、明記物件を含め家財保険で設定できる保険金額は保険会社ごとに上限額が決められている点に注意しましょう。
まとめ
保険金額を設定するためには、建物の評価額を知る必要があります。
保険金額を評価額以下に設定する保険を「一部保険」といいますが、毎月の保険料を安く済ませられる一方で、十分な補償額がもらえないデメリットがあります。
保険金額が評価額を超えてしまっている状態を「超過保険」といいますが、現在では超過保険にならないよう保険会社の方でもチェック機能が働いていたり、万一払いすぎてしまった場合は保険料を還付してくれる仕組みもあったりします。いずれにしても契約前にはよく確認しておきましょう。
十分な補償を得るには、新価の評価額と同額を保険金額とする「全部保険」の形態で契約をしましょう。
現在の評価額(新価)を基準に保険金額を決めても、物価の上昇などで10年後はさらに評価額が上がっているかもしれません。
保険会社によって、その差額分も補償してくれる場合があるので、この点についても約款などで確認するようにしましょう。
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