平凡社 世界大百科事典

トルネード

北アメリカ大陸の主として中南部に発生する大気の激しい渦巻。日本の竜巻と同様のものであるが,それよりも規模の大きいものが多い。また,竜巻という言葉は陸上・海上ともに用いられるが,トルネードは一般に陸上の現象に用いられ,海上のものはウォータースパウトwaterspoutといわれる。巨大な積乱雲の底から漏斗状または柱状の雲が垂れ下がり,通常,地上から巻き上がる砂塵を伴う。渦巻は一般に低気圧性の回転(北半球では反時計回り)であり,その直径は100~500mとさまざまである。その激しい渦巻と気圧急下降のため,樹木を引き抜き建物を破壊し,重いものも空中高く巻き上げ,そのため多くの人命が失われることもある。トルネードの通過したところには,激しい破壊の跡を残し,その長さは数百mから数百kmと場合によって異なる。被害の状況から風速が100m/sを超えると推定されるものもある。トルネードは,地上に湾曲またはとびとびの跡を残しながら,上空の一般風で移動する。激しい雨を伴い,一般には雷光,雷鳴を生じる。トルネード発生の要因は激しい雷雨と同じように,大気の不安定,高い湿度,下層における強い収束などが考えられるが,まだ不明の部分も多い。アメリカにおけるトルネードによる死者は,年による変動はあるが,平均すると年間ほぼ200人であり,最悪の例は1925年3月18日,ミズーリ,イリノイ,インディアナの各州で起こった689名である。

 アメリカの統計によると,一年を通じて発生するが,春と夏とに多く,ことに4~6月の3ヵ月で全年の半数以上を占める。ついでトルネードの分布を見ると,非常に多いところはロッキー山脈の東,アパラチア山脈までということができよう(図)。ことにオクラホマ州,カンザス州,テキサス州などで顕著である。なお,時刻から見ると,雷と同じように午後に多く発生し,トルネード全体のほぼ1/3が15時と18時の間に起きている。各トルネードの発生する時刻と場所を正確に予報することは非常にむずかしいが,気象レーダーによる観測資料がこれを解決する重要な手がかりを与えるものである。アメリカ海洋気象局(NOAA)はじめ各種研究機関および大学が協力し,レーダー観測網と高性能計算機を結びつけてトルネードの予報精度の向上をはかるため,非常な努力を行っている。また,観測所や自治体ではこれら機関からの警報に基づき,住民に地下室などへの避難を呼びかけている。

竹内 清秀
図-アメリカにおけるトルネードの分布
図-アメリカにおけるトルネードの分布
表-トルネードの分類
表-トルネードの分類