平凡社 世界大百科事典

ヒッピー

1960年代のアメリカで既存の道徳観や生活様式に反抗し,ひげや長髪をたくわえ,ジーンズや風変りな衣装を身につけ,ドラッグやサイケデリックなロック音楽,東洋的な瞑想を好み,定職につくことを拒否して放浪した人々を指す。このヒッピー風俗は,カウンターカルチャー(対抗文化)とともに,大なり小なり世界中に広まった。日本でも60年代の〈みゆき族〉や〈フーテン〉以来,その影響を見いだすことができる。語源的には1950年代に流行した〈ヒップスターhipster〉に由来し,当初は〈現代感覚に敏感な者〉〈本当のフィーリングをもった者〉といった意味であった。グリニチ・ビレッジやサンフランシスコのヘート・アシュベリーのような都市にたむろしたことを考えるとき,ヒップスターやビートニクはきわめて〈都市的〉な現象であったことがわかる。

 それに対して,ヒッピーはコミューンの形式や,前近代的な共同体を残す国々への世界放浪を通じて〈非都市的〉なものを目ざしたといってよい。50年代にヒップスターを自任したA.ギンズバーグは,58-62年にヨーロッパ,南アメリカ,アジアを放浪し,インドではヒンドゥー教の修行を受け,帰国後には〈ヒッピーの聖者〉として若者たちに崇拝されたが,彼はまさに,ヒップスター→ビートニク→ヒッピーという一つの流れを,みずから体現したわけである。おりしもアメリカでは,黒人の人種差別反対運動(ロック

粉川 哲夫