平凡社 世界大百科事典

周氷河地形

寒冷な気候の支配する周氷河地域では,地表に凍結と融解の作用が強く働き,残雪や風の作用も加わって,他の気候地域とは異なった特有の地形が発達する。そのような地形を総称して周氷河地形という。〈周氷河〉の語は最初,第四紀洪積世(更新世)に拡大した大陸氷床の周辺地域の意味に用いられたが,後にそれとは関係なく,寒冷地域のうち永久凍土分布地に限るとする意見もある。いずれにせよ周氷河地域は寒冷で地面が凍結融解を繰り返し,それが地形形成に大きな役割を果たしている気候地形形成地域の一つである。定義によって周氷河地域の範囲は一致しないが,陸地面積の10~15%を占めるとみられている。

周氷河地形形成作用

周氷河地域の地形形成作用で最も重要な凍結融解作用frost actionは,〈凍結破砕作用frost shattering,congelifraction〉と〈融凍攪拌(かくはん)作用(クリオタベーション)cryoturbation〉に大別される。前者は,岩石の節理や孔隙中の水が凍るとき体積が約10%増大するために生ずる圧力で,岩盤から岩塊・岩片を剝離させ,それをさらに細片化して岩屑をつくる作用である。後者は凍結擾乱(じようらん)作用ともいい,水を含む未固結堆積物の凍結融解による体積変化によって,地表付近の物質の変位・変形をもたらす作用で,以下の諸現象が含まれる。それは,凍結進行時に下部の未凍結部分から毛管現象で水を吸い上げ,氷を析出して地面を押し上げる凍上frost heave,地中の礫が凍上する土に凍着して引き上げられる凍着凍上,それにより地表へ引き上げられる礫の淘汰,地表の収縮および凍結割れ目の形成,凍土中に取り残された未凍結土にかかる凍結圧や,土の粒度組成と水の不均等分布による体積の不等変化が引き起こす物質の集塊変化や貫入などで,斜面ではそれにソリフラクションすなわち水に飽和された表層土全体が,水を潤滑材としてゆるやかに斜面を流れ下る現象が加わる。レスや火山灰など毛管力の強い土は,凍結時に大量の水を吸い上げるので,この作用を受けやすい。永久凍土の分布地域では表層の数十cmから2mほどが活動層と呼ばれ,夏季に融解するが,冬季に再凍結する際,地表から凍結が始まり,凍土層の形成が下方へと進むので,下の永久凍土層にはさまれた未凍結部分は,強い凍結圧を受け激しく攪拌される。残雪の作用も周氷河地域に一般的であり,裸地が広いこと,凍結・融解の反復で土のねばりが失われることで,風の作用も無視できない。これらの諸作用は総称して周氷河作用といい,複合して地表に働き,凸部を削剝して地表を低下させる。周氷河地域に働く削剝作用を,凍結削剝作用とよぶ。この作用は,谷底に沿って線的に働く河川の作用と異なり,地表に広く面的に働くため,全体として小起伏のなだらかな斜面を発達させる。

地表形態

凍結破砕作用によって生じた岩塊は,さまざまな岩塊地形を発達させる。緩斜面では岩塊が移動できず,地表をおおって岩石原block fieldをつくる。斜面では個々の岩塊がゆっくり滑る滑動岩塊,多量の岩屑が全体として雪食作用による急斜面ができ,全体として両斜面の傾斜の異なる非対称山稜asymmetrical ridgeが発達する。日本では北海道の大雪山や日本アルプスに現成の周氷河地形が,北日本の各地に氷期につくられた周氷河地形が分布している。

小疇 尚