平凡社 世界大百科事典

機能肢位

関節に可動制限のある際の日常生活上機能的に能率のよい肢位。各関節にはそれぞれ固有の可動域があり,それらの組合せによって総合的な運動が営まれている。しかし,これらの関節の正常な可動域が種々の疾患や外傷あるいはギプス固定などにより制限されることがある。このような場合,たとえ可動制限をきたしても生活上比較的便利な肢位というものがある。このような肢位を良肢位とか便宜肢位あるいは機能肢位といい,これと相反する不便な肢位を不良肢位,不便宜肢位と呼ぶ。

 関節の可動制限が同じであっても,その関節がどのような肢位で制限されているかによって,生活の不自由さの程度はまったく異なる。たとえば肘関節が0~30度の可動域があるのと90~120度の場合とではまったく異なる(各関節の基本肢位は手足を伸ばして静止,直立したときの肢位で,すべて0度である)。前者の場合には,ひじはほとんど伸展位にあるので,物をぶら下げることくらいにしか役立たない。ところが後者では手を顔や頭に持っていくことが可能であり,食事・洗面・結髪などの諸動作を行うことができるので,日常生活の便利さからみてこの肢位のほうが前者よりはるかにまさっているといえよう。しかし,もしも両方の肘関節を固定せざるをえない場合には,利き腕のほうは90度以上の鋭角屈曲位に,もう片側は20~30度の軽度屈曲位に固定するほうが,日常生活を送っていくうえで両肘関節ともいわゆる機能肢位での固定よりもまさっている。また股関節の機能肢位は通常の場合軽度屈曲位で,内・外転および回旋中間位が機能肢位とされている。屈曲が少なめであれば立位が楽であり,反対に屈曲が大きければ座位が楽となり,脊柱の代償により日本式正座も可能である。

 このように機能肢位とは男女の別,職業の種類,生活様式などにより必ずしも一定したものではない。ときには,ある関節の不良肢位がその人にとっては良肢位であることもありうる。また小児の場合には成長につれての変化を考慮する必要があり,また関節の可動制限が一つの関節だけにとどまらず2関節以上に及ぶ場合など,患者の生活全体を十分注意し,将来のこともよく考えて,機能肢位を設定する必要がある。→関節

東 博彦