平凡社 世界大百科事典

資力調査

日本での用語は資産調査であったが,その調査内容として所得その他をも重視するので,近年は資力調査の語が多く用いられる。日本でその典型的な例は生活保護制度において見られる。〈補足性の原理〉によって申請者の受給資格を判定するため,収入,資産,能力などの有無や程度,およびその利用可能性その他を調査する。この資力調査は生活保護に限らず,いずれの国でも選択的な公的扶助行政などでは,その選別手段として多く採用されてきている。しかしそれはしばしばプライバシーを侵害し屈辱感をいだかせる。この欠陥を克服するため,厳格な資力調査に代わって所得調査income testだけを行う方法などがとられるようになってきている。この場合,給付もまた個々のニーズに厳しく対応させない定型的なものとなる。日本では児童手当や福祉年金の類その他にみられる。

 イギリスでは,1942年に出されたベバリッジ報告が,当時の無拠出年金,補足年金,扶助給付に対して別々の行政機関が別々の資力調査を行っていたのを批判し,これらを統一して単一の機関が統一化された諸原則によって行うべきだと提唱した。現在のイギリスでは,比較的廉価で必要な人々に端的に福祉を充用しうるとして資力調査を支持する保守派と,選択性を普遍性にかえ,権利獲得のために資力調査を軽減,廃止の方向に進めるべきであるとする進歩派とが対立している。

小沼 正