平凡社 世界大百科事典

蘇曼殊

中国,清末・民国初期の文人。名は玄瑛。曼殊は僧号。中国人を父,日本人を母として横浜に生まれる。少年時代を広東で送ったのち早稲田大学等に留学。のち出家したが章士釗(しようししよう),劉師培,章炳麟(しようへいりん)ら革命家と交わり,南社の詩人となった。英語に長じバイロン,シェリー等西洋のロマン派の詩を最も早く中国に紹介した。小説も書いたが,後の郁達夫の私小説の世界に一脈通ずるものがあるものの旧型の言情小説にとどまり,新しい文学を開くには至らなかった。没後友人たちによってかなり高く評価されたが,それは彼が激動の時代に漂泊者として生きた生き方の中に,当時の革命家たちがもった,一種ロマンティックな雰囲気を体現していたためであろう。友人柳亜子の編による《曼殊全集》全5巻(1935)がある。

中島 長文