平凡社 世界大百科事典

SPF動物

specific pathogen-free animalの略で,医学,薬学,獣医学などで無菌動物,ノトバイオートgnotobioteなどがある。無菌動物は帝王切開・子宮切断により胎児をとり出し,封鎖方式で無菌処置で哺育させ,検出可能な微生物がないものであり,ノトバイオートは無菌動物に明らかに同定された微生物を定着させている動物を指す。

 SPF動物はマウス,ラット,モルモット,ブタなどで生産され,実用化されている。通常の動物に比べて出産率,離乳率,体重増加の点ですぐれている。

 SPF動物では特定病原の不在が証明されているので,その除外している病原を明記しなくてはならない。例えばSPFブタであればサルモネラ菌,豚丹毒菌,気管支敗血症菌などが不在であるとか,豚回虫,豚糞線虫,豚腸結節虫,豚肺虫などが不在であるというように特定病原を保有しないものであるが,これらのうち胎盤経由で感染するものは作出が難しい。SPF動物の作出は通常次のような手順で行われる。第1に無菌動物ないしノトバイオートをアイソレーターからSPF動物舎に入れ,第2にそれを種としてSPF動物舎内で繁殖を行う。SPF動物舎は外部と遮断されており,内部にはいる空気をはじめすべての器材は関門で滅菌されるが,空気はろ過または灼熱(しやくねつ)滅菌されたのち,温湿度調節されて供給される。その空気は建物の各区画ごとに気圧差によって一方向に流れるようになっている。飼料,飲水,ケージ,敷料その他の器材は両扇式オートクレーブ,消毒薬槽あるいは消毒薬噴霧室をへて内部へ搬入される。飼育・管理者ももちろんシャワーを浴び,滅菌した衣服,靴,帽子,マスク,手袋などでできるだけ体を覆って内部へ入る。動物舎内は殺菌灯をつけ消毒薬によるふき掃除をたえず行う。

 無菌動物またはノトバイオートに微生物を自然に定着させて,動物の生理機能にある程度の変化を起こし,その動物の寿命に悪影響を及ぼす病原微生物が感染していない動物を用いて,封鎖環境下で実験が行われるのが理想であるとする考えから発している。

本好 茂一