平凡社 世界大百科事典

レフシェッツ(Solomon Lefschetz)

アメリカの数学者。モスクワに生まれ,パリで育った。エコール・サントラルを卒業後,アメリカに渡って技師となったが,1910年事故で両手を失った。このためマサチューセッツのクラーク大学の大学院に入学して,数学で学位をとり(1911),ネブラスカ大学やカンザス大学で教えた。この間に,代数曲面の位相的構造を究明して,それによって代数曲面上のアーベル積分の理論を発展させた。この代数幾何学への貢献により19年にフランス学士院からボルダン賞をうけた。24年にプリンストン大学に招かれ,28年に教授となり,53年の退職まで務めた。この間に,ホモロジーの交点理論を展開して,不動点定理や双対定理に不滅の業績を残し,代数的位相幾何学の祖となった。第2次世界大戦中より,微分方程式の幾何学的理論に関心をもち,プリンストン大学退職後も,企業やブラウン大学に研究所をもって精力的に活躍して,アメリカにおける力学系理論の進展に貢献した。

中岡 稔