平凡社 世界大百科事典

人の子

元来は単純に〈人間〉の言い換え(《詩篇》8:4など)であったが,後期ユダヤ教の黙示文学では歴史の終末時に審判のため出現する天的存在を指す術語(《ダニエル書》7:13など)となる。これを背景に新約聖書の福音書ではイエスが自己を〈人の子〉として表示する。これがどこまでイエス自身の実際の自己理解を反映するものか論争されている。2世紀以後の古代教会では再び意味が変移し,〈神の子〉イエスが同時に〈真に人間〉であることを表現する呼称となる。→神の子

大貫 隆