平凡社 世界大百科事典

身分犯

犯罪は,その行為主体について制限のないのが一般であるが,場合によっては,一定の身分を有することが必要なこともある。このような犯罪をとくに身分犯と呼ぶ。判例によれば,身分とは〈男女の別,親族の関係,公務員たるの資格のような関係のみに限らず,すべて一定の犯罪行為に関する犯人の人的関係である特殊の地位または状態を指称する〉と定義されており,その結果,麻薬取締法64条の2-2項の〈営利の目的〉のような主観的要素も身分にあたると解されている。

 身分犯は,その身分があることによってはじめて行為が可罰的となる場合(構成的身分犯,真正身分犯)と,その身分があることにより刑が加重減軽される場合(加減的身分犯,不真正身分犯)とに区別される。このような区別は,刑法65条の適用にとって意味をもつ。なぜなら,同条1項は,〈犯人の身分によって構成すべき犯罪行為に加功したときは,身分のない者であっても,共犯とする〉,2項は〈身分によって特に刑の軽重があるときは,身分のない者には通常の刑を科する〉と規定しているからである。通説・判例は,1項は構成的身分犯(たとえば収賄罪),2項は加減的身分犯(たとえば常習賭博罪)に関する規定と解しており,その結果として,たとえば,私人が公務員と共謀して収賄行為を行えば,私人も65条1項により収賄罪の共犯(共同正犯,教唆犯,従犯)たりうるし,反対に,常習者と非常習者とが賭博行為を行った場合には,65条2項により,常習者には常習賭博罪(186条1項),非常習者には単純賭博罪(185条)が成立することになるのである。

西田 典之