平凡社 世界大百科事典

息子と恋人

イギリスの小説家D.H.ロレンスの初期の代表作。1913年刊。モレル夫妻の葛藤,主人公である息子ポールの成長,彼を溺愛する母モレル夫人と恋人ミリアムとの間でのポールの悪戦苦闘を描き,きわめて自伝的色彩が濃い。ロレンス独特の自己没入的な,読者に作中人物の経験の激しさそのものを伝えようとする姿勢がすでにあらわであり,語り手の判断の裏側から当時の男女の実体がくっきり浮かび上がる稀有(けう)な風俗小説である。この作品においてもロレンスの自然描写は魅力的である。

鈴木 建三