平凡社 世界大百科事典

完全の鑑

アッシジの聖フランチェスコの最古の伝記の一つで,愛弟子のひとり修道士レオが師の言行を記録したものにもとづいて1300年ころまとめられた。福音書の伝えるイエス・キリストにならって生きることを決意し,もろもろの聖人たちのなかで最もキリストに近いと称せられるフランチェスコの姿を素朴で感動的な筆で描き出している。フランチェスコはキリストに従う者はみずからの意志,欲望,すべての持物を放棄しなければならないと説き,とくに完全な清貧を強調したが,彼の存命中すでに清貧に関する会則を緩和しようとする妥協的な動きがあり,レオはそのことを憂慮し,師の真意をあきらかにしようとつとめている。

稲垣 良典