平凡社 世界大百科事典

ビトキエビチ(Stanisław Ignacy Witkiewicz)

ポーランドの劇作家,小説家,芸術理論家,哲学者,画家。両大戦間期ポーランドのアバンギャルド芸術運動の推進者の一人。シュペングラーの歴史哲学,オルテガ・イ・ガセットの大衆理論と軌を一にする現代文明批判に裏打ちされ,風刺,パロディ,グロテスク,エロティシズムに満ちた多くの戯曲,小説を残した。第2次世界大戦でドイツ軍がポーランドに侵入した際に自殺した。戦後,ファシズム出現の予言者,不条理劇・グロテスク劇の先駆的存在として世界的評価を得た。また芸術理論の分野では,独特の存在論に基づく,自然主義・象徴主義批判としての〈純粋形式〉理論を説き,ゴンブロビチら同時代の芸術論に大きな影響を与えた。代表作として,戯曲には《小さな館で》《ギュバル・バハザル》(ともに1921),《狂人と尼僧》(1923),《母》(1924),《靴屋》(1934)があり,小説では《秋の別れ》(1927),《非充足》(1930)がある。芸術論として《絵画における新形式》(1919),《演劇における〈純粋形式〉論序説》(1923)などもある。

小原 雅俊