平凡社 世界大百科事典

レム(Stanisław Lem)

ポーランドの小説家。リボフに生まれ,医科大学に進み,第2次大戦後クラクフで学業を終えた。早くからSF小説の分野に才能を示し,《金星応答なしAstronauci》(1951)で本格的に文壇に登場したが,占領下の病院で起きたナチスの犯罪をグロテスクな筆致で描いた《変容の病院》(1955)は彼としては異色の現代小説である。SF小説の代表作には《泰平ヨンの航星日誌Dzienniki gwiazdowe》(1957),《星からの帰還Powrót z gwiazdy》《ソラリスの陽のもとにSolaris》(ともに1961),《宇宙創世記ロボットの旅Cyberiada》(1965)などがあり,いずれも綿密な科学的推理と豊かな想像力とがみごとに結びあった高水準の宇宙物あるいは未来小説として洋の東西を問わず絶大な人気がある。彼は科学と文学が現代文明の中で果たすべき倫理的役割についてきわめて自覚的な作家である。理論的な著作にも《科学技術大全》(1964),《偶然の哲学》(1968),《SFと未来学》(1970)ほか数点がある。

西 成彦