平凡社 世界大百科事典

ブドウ(葡萄)球菌

ブドウ状球菌ともいう。グラム陽性,直径0.8~1.0μmの球形の細菌で,通常の培地で容易に培養される。非運動性,芽胞非形成性の通性嫌気性細菌で,固体培地上では無差別な空間方向に分裂増殖してブドウの房状の配列を示すことから,この名がある。しかし双球菌状,あるいは短鎖状の配列もとる。病原性の弱い表皮ブドウ球菌は人間の皮膚および粘膜上に常在しているが,病原性の強い黄色ブドウ球菌は,連鎖球菌と並んで化膿の代表的な原因菌であり,食中毒の原因菌ともなる。黄色ブドウ球菌の多くは,溶血毒素(α,β,γ,δの種類がある),食中毒症状を引き起こす腸管毒(エンテロトキシン),および種々の酵素あるいは菌体外タンパク質など(ヒトの血漿を凝固させるコアグラーゼ,プロテアーゼ,ヌクレアーゼ,ペニシリナーゼなど)を産生する。ブドウ球菌エンテロトキシンは熱に安定であるため,ブドウ球菌が汚染・増殖した食品を加熱しても中毒の予防にはならない。したがって食中毒の予防には,食品のブドウ球菌による汚染の防止が第一に必要である。

川口 啓明