平凡社 世界大百科事典

スター・カー

北海に面するイギリスの東岸に近い,ヨークシャーのスカーバラ市南方8kmにある中石器時代マグレモーゼ文化初頭の遺跡。炭素14法年代で前7500年。カンバ林に囲まれたヨシの茂る湖辺の湿地に,200m2の範囲にわたってカンバの幹・枝を敷き,土や石を置いて基礎を作り,4~5の〈家族〉が冬から4月にかけて住んだらしい。人口は獣骨総量からの推定,また居住期間は1~4月に自然に脱角するシカの頭骨の存在などからの想定である。家の構造は不明である。石器には彫刻刀,スクレーパー,細石器,突錐,打製石斧,角器には片側に逆刺(かえり)を数多く連ね,複数組み合わせて使うやす(狩猟具であるから槍と呼ぶべきか),柄孔をあけたつるはしが目だつ。また,角付きのシカの額骨に紐孔をあけたものがあり,呪術の踊りか狩りの誘い出しかに用いられた〈仮面〉とみられている。カンバの皮やピッチの利用なども注目に値する。アカシカ,オオシカ,ノロシカ,ウシ,イノシシや鳥を狩猟の対象としたが,猟犬はもたない。漁具,魚骨もみられない。植物ではヨシ,ミズガシワの根茎を乾かし粉末にして食べたと想定されている。

佐原 眞