平凡社 世界大百科事典

スターリングの法則

心臓の法則ともいう。心臓のポンプ機能の自己調節性に関する法則で,イギリスの生理学者スターリングErnest Henry Starling(1866-1927)および彼の共同研究者フランクO.Frankが1900-14年に心肺標本を使用して,これを発見した。このためフランク=スターリングの法則ともいう。スターリングの法則の第1は,大静脈から心臓への流入血液量(静脈環流)が増大すると,心室の拡張期末容積は増大するが,心臓は一回拍出量を増加させることによって,そのポンプ機能を維持するように適応しているというもの。このような心臓の適応は,心筋固有の収縮特性に基づくと説明されている。すなわち,拡張期末期の心室容積の増大は,静止時の初期心筋長を増加させる。一般に心筋の静止状態から収縮状態に移行するさいに発生するエネルギーは,収縮開始直前(静止時)の心筋長に比例して増加するという性質を有している。この固有の性質のために拡張期末心室容積が増大すると,比例して収縮期に発生するエネルギーが増加し,一回拍出量が増加して,最終的に,増加した静脈環流量と毎分心拍出量は平衡状態に達するのである。スターリングの法則の第2は,大動脈圧が急激に上昇し,心臓からの拍出に対する圧力負荷が増大したさいの心臓の適応である。この場合,一回心拍出量は一過性に減少する。しかし,静脈環流は一定であるため,心室への血液の貯留が起こり拡張期末心室容積は増加してくる。この拡張期末心室容積の増大は,上述した機構によって減少した一回拍出量をもとの量まで増加させるように働き,ついには平衡する。以上のように,心臓に対する容積負荷および圧力負荷が増大し,拡張期末容積が増加すると,心臓は心筋固有の収縮特性によって一回拍出量を増加させるような自己調節が働き,そのポンプ機能を維持するように適応している。この法則は除神経した(神経の連絡が断たれた)心臓あるいは移植心臓のポンプ作用の調節にさいしてもたいせつである。→心拍出量

二宮 石雄