平凡社 世界大百科事典

アブラヨタカ

ヨタカ目アブラヨタカ科Steatornithidaeの鳥。この科はアブラヨタカ1種だけから成る。全長約46cm。全身濃い茶褐色で,頭上,雨覆い,風切羽,尾羽などには白い丸斑が散在する。一見ヨタカに似て,口が大きく,長い口ひげをもち,翼と尾は長く,足は短く弱い。しかし,くちばしはじょうぶで,タカのように鋭い。また尾羽が堅い。ギアナ地方からエクアドルにかけての南アメリカ北部とトリニダード島に分布する。夜行性で,森林内(まれに海岸)の洞穴に群集して生息し,夜間洞穴を出てヤシやクスノキ科の植物の果実を食べる。夜行性の果実食の鳥はほかに例がないであろう。採食法は,ホバリングしながら鋭いくちばしで果実をもぎとり,飲み込む。飲み込んだ果実は昼間休息中に消化され,種子は吐き出す。このため,アブラヨタカのすむ洞穴ではヤシなどの種子が堆積している。留鳥で,渡りはしない。果実を求めてかなり遠くまで(50kmの記録がある)飛び歩くが,必ず自分の洞穴に戻る。真っ暗な洞穴内では音波を利用して飛行する。ただし,その音波は超音波ではなく,人間の可聴範囲の6~10kHzといわれる。洞穴の外でも高い声を出すが,眼はよく発達しており,夜間果実を探し出すのは視覚と臭覚によるらしい。雌雄は1年を通じてつがいになっていて,繁殖期外でも自分の巣で休息する。巣はかなり大きな皿形で,洞穴内の岩棚の上に口から吐き出した半消化の果実と糞とでつくられ,壊れるまで毎年使われる。1腹の卵数は2~4個。雌雄で抱卵,育雛(いくすう)するが,孵化(ふか)と雛の成長は非常におそく,最初の産卵から最後の雛の巣立ちまでにほとんど6ヵ月を要する。雛はたいへん脂肪に富み,原住民は雛からランプ用や料理用の油を採取するので,アブラヨタカの名がある。ただし,現在では雛の採取は禁止されている。

森岡 弘之
図-アブラヨタカ
図-アブラヨタカ