平凡社 世界大百科事典

カミナリベラ

南日本の沿岸にふつうに見られるスズキ目ベラ科の魚。ベラ科の魚は雌雄や成体と幼魚とで体色,斑紋が異なる例が多い。また性転換をするものもあり,その際,生まれつきの雄と,雌から転換した雄とで体色,斑紋が異なる場合もあるなどたいへん複雑で,同種のものが別種として扱われることも多い。本種もその一例で,従来,ニジベラS.trossulaとされていたものはカミナリベラの雄型であることが明らかにされ,ニジベラという種は消えることとなった。背方が淡褐色で腹方は淡く,体側下方に暗青色点からなる4本の縦帯をもち,その名の由来となったジグザグの稲妻を思わせる短い黒色縦帯を胸びれのすぐ上部にもつのが従来からカミナリベラとされたものである。背方が赤みがかった灰色で,腹方が淡黄色,体側に淡青色の1縦線,背びれ基底に沿う体の背縁に緑色の1縦帯,頭部にも淡青色の1縦帯をもち,体側下方には暗色点からなる縦線はもたないのがニジベラ型で,雄の成魚である。

 沿岸の岩礁地帯のすぐそばの砂底にすみ,夜は砂に潜って眠る。英名でrainbow-fishといわれるように美しく,観賞魚とされるが,食用とされることはほとんどない。全長15cmほどになる。千葉県および島根県以南からオーストラリアのクイーンズランドまでの西部太平洋に広く分布する。

清水 誠