平凡社 世界大百科事典

ストイケイア

前300年ころにユークリッド(エウクレイデス)によって著された数学の古典で,《原本》または《原論》と訳される。ストイケイアは英語のelementsに当たるギリシア語である。幾何学的内容が多いため《幾何学原本》と呼ぶこともある。この著作は当時のギリシア数学を集大成したもので,13巻よりなり,その内容はおよそ次のようである。第1~第6巻は平面幾何で,第1巻は定義,公準,公理から始まり,三角形の合同定理,平行線に関する定理,三平方の定理などが証明され,第2巻は面積,第3巻は円,第4巻は正多角形,第5巻は比例,第6巻は相似形を扱っている。第7~第9巻は整数論的内容で,最大公約数を求めるいわゆるユークリッドの互除法や素数が無限に存在することの証明などがある。第10巻は無理数論で,とくに作図できる無理数について述べている。第11~第13巻は立体幾何で,5種の正多面体の存在などが証明されている。ストイケイアの重要な点は,厳密な論理体系の見本を史上初めて提示したことにある。実際,それは定義,公準,公理だけを前提として,そのあとは直観によらず,もっぱら論証によって結果を導くという形式で叙述され,一つの論理体系にまとめあげられている。このため,これの後世に与えた影響は数学だけにとどまらず,広く西洋文化に及び,その文化史上の意義は絶大である。

中岡 稔