平凡社 世界大百科事典

ドーバー海峡

イギリス南東岸とフランス北岸の間の海峡。フランスではカレー海峡Pas de Calaisと呼ばれ,古称はガリア海峡Fretum Gallicum。イギリスのダンジネス岬からフランスのグリ・ネ岬までを南限,またイギリスのノース・フォアランドからフランスのカレーまでを北限とし,イギリス海峡と北海を結ぶ。幅30~40km,水深35~55mであるが,中央の浅瀬により二つの海域に区分される。かつての河谷が後氷期の海進によって沈水して形成された。1588年にはイギリスとスペイン無敵艦隊との海戦,第2次世界大戦では連合軍のダンケルク撤退など歴史上の舞台となった。イギリス側にはドーバー,フォークストン,フランス側にはカレー,ブーローニュ・シュル・メールなどの港湾都市があり,連絡港として機能している。海峡横断水泳は1875年のキャプテン・ウェッブMatthew Webb(1848-83)が最初である。また1856年以来たびたび海底トンネル計画が論議されたが,1984年の〈海峡トンネル協定〉にもとづき,民営方式で87年鉄道専用の〈ユーロトンネル〉の本格的工事に着工した。カレーとフォークストンを結ぶ全長50.5km(海底部分37.9km)が94年5月全面開通し,同年11月パリ~ロンドン間を約3時間で結ぶ直行特急ユーロスターの営業運転が始まった。

長谷川 孝治