平凡社 世界大百科事典

マラッカ海峡

東南アジア,マレー半島とスマトラ島との間の海峡。全長約800km,幅40~350km。南西モンスーンの季節に強風が吹くこともあるが,通常は波が穏やかで古くから東西貿易の主要航路であった。1869年のスエズ運河開通で重要性はさらに高まり,マレー半島側の鉱業,農業の大規模開発を促し,ペナン,シンガポール両港に繁栄をもたらした。現在,海峡は世界で船舶航行の最も多い海域の一つである。通過する貨物で最も多いのは中東産の石油とその製品で,行先の第1位は日本である。航路上にあるシンガポールは大石油精製基地となり,1980年代には日本系企業の石油化学工場の建設が進められた。シンガポールのすぐ南にあるインドネシアのバタム島でも,石油工業の開発が始まった。一方,石油タンカーの大型化は,浅瀬が多く航行可能な水路が狭いマラッカ海峡経由を避けて,スマトラ,ジャワ両島の南側を通る航路を新設させた。これによって,海峡交通の混雑に多少の歯止めがかかると期待されている。

太田 勇