平凡社 世界大百科事典

随園食単

中国,清代の文人として名高い袁枚(えんばい)(随園は,彼の庭園の名であり,また雅号でもある)が著した料理書。1巻。1792年(乾隆57)刊。〈食単〉とは〈菜単(メニュー)〉ではなく,料理法を記した書付けの意である。まず料理に関する一般的な心得を須知単,戒単で述べ,ついで料理の材料により,海鮮単,特牲単,雑牲単,羽族単,水族有鱗単,水族無鱗単,雑素単の7部(217種)に分け,これに小菜単43種,点心単55種,飯粥(はんしゆく)単,茶酒単を加えて,それぞれの調理法や品評を記している。いずれも袁枚自身が口にして美味と賞した料理についての記録である。19世紀フランスのブリヤ・サバランが著した美食の古典とでもいうべき《味覚の生理学》(《美味礼讃》)と東西双璧をなす《随園食単》は,日本においても明治以降,受容され紹介されてきた。とりわけ青木正児によって完訳されたことにより,今日多くの人が手にとり中国の食文化の一端を理解できるようになった。

坂出 祥伸