平凡社 世界大百科事典

スルタン・ガリエフ(Sultan Galiev)

ボルガ・タタール出身の民族共産主義者。ロシアの二月革命後,1917年7月にカザン・ムスリム社会主義者委員会に加入し,同年11月,ロシア社会民主労働党(ボリシェビキ)に入党した。スターリンに抜擢されて,中央ムスリム軍事参与会議長,民族人民委員部参与会員,《民族生活》紙編集長,タタールスタン共和国中央執行委員などの要職を歴任した。彼はイスラム東方世界における社会主義の特殊な性格を強調し,階級闘争とプロレタリア独裁に関するマルクス主義の古典理論を修正することにより,〈第三世界〉の独自性に着目した最初の社会主義者である。23年5月に反革命容疑でスターリンの命により逮捕され,〈民族主義的偏向〉として党から除名された。いったん釈放されたが,28年に再逮捕,強制労働10年の刑を宣告され,ソロブキ収容所に服役した。40年処刑されたが,90年に名誉回復した。主要著作《ムスリムに対する反宗教宣伝の方法について》(1922)。

山内 昌之