平凡社 世界大百科事典

俗字

漢字の字体で,民間で流行する異体字を正字に対して俗字という。正・俗をわける基準は時代によって異なる。たとえば,中国の漢代の《説文解字》では〈躬〉を〈躳〉の俗字とするが,唐代の《干禄字書》では,ともに正字とする。《干禄字書》は顔元孫の手になる楷書による字形の正・俗を分けた最初の字書であり,その後の字書はすべてこれによる。今日では過去の俗字も常用漢字として大いに利用されている。なお,日本においては,異体字と正字との区別を扱ったものに中根元珪の《異体字弁》(元禄5年の序)がある。

辻本 春彦