平凡社 世界大百科事典

方程式があったとき,それを満たすもの全体を,その方程式の解という。

\(\sqrt{x}\)x=1,x2-2x+1=0はいずれも解はx=1であり,x2-1=0の解はx=1およびx=-1である。微分方程式の場合のように,解が関数である場合もある。代数方程式の解は根とも呼ばれるが,根と解とには,考え方に差異があるので,その説明から始めよう。

係数が複素数の多項式fx)=a0xna1xn1+……+ana0≠0)は,

と因数分解する。ここにでてくるα1,……,αn全体をfx)の根,または,方程式fx)=0の根という。同じαがα1,……,αnの中にm回現れるとき,αはm重根であるという。m≧2のとき重根,m=1のとき単根という。多項式や代数方程式に対して,根(ルーツroots)という言葉が使われるのは,根全部が定まれば,あまり重要でない数の因子a0を無視すれば多項式および方程式が定まるからである。しかしながら,一つの複素数を考えたとき,αがfx)=0の根であることと解であることは同一なので,根と解とが混同される傾向がある。本来は解には〈重複〉という概念は付随していない。

根(解)と係数の関係

二次方程式ax2bxc=0(a≠0)の2根がα,βであるとき,α+β=-b/a,αβ=c/aである。これが二次方程式の場合の根と係数の関係である。もっと一般に前述のfx),α1,……,αnについて,

という関係がある。これがn次の多項式(または方程式)の根(または解)と係数の関係である。→解の公式

永田 雅宜
平凡社 世界大百科事典

溶液

均一な液相をつくっている混合物。均一混合物には液相のほかに,気相,固相の場合がある。固相の場合は溶質という。溶媒,溶質がともに液体で,たとえば水とエチルアルコールのように任意の割合で混合する溶液の場合には便宜上,量の多いほうを溶媒とする。均一な液体混合物の肉眼でわかる特徴は,透明な混合物を長時間静置するか遠心分離機にかけるかしても分離が生じないこと,また透明のように見えてもその混合物を逆さまにした場合に液体の流れがみえないことである。たとえ透明でも,不均一であると各部分の密度,屈折率が異なるから逆さまにすると流れが生じ肉眼でみても流れる様子が認められる。

電解質溶液と非電解質溶液

極性溶媒に電解質が溶解し,陽イオンと陰イオンとに解離している溶液を電解質溶液またはイオン性溶液といい,電解質を含まない溶液を非電解質溶液または分子性溶液という。前者ではイオン-イオン間,イオン-溶媒間の力がおもに寄与するのに対し,後者ではふつう分子間力が支配するので,両者は異なった立場から取り扱われる。溶液中にイオンが含まれているかどうかは,溶液の電気伝導度(導電率)を測ることによって知ることができる。すなわちイオンが存在している溶液の電気伝導度はイオンを含まない溶液のそれより大きい。電解質が溶液中で解離する度合(解離度)は,電解質がイオン結合からなる場合は大きい(強電解質または〈真の電解質true electrolyte〉)。しかしイオン結合性ではない物質でも,溶媒との相互作用により,部分的にイオンとなりうる可能性を有する場合がある(弱電解質または〈潜在的な電解質potential electrolyte〉)。

溶液の熱力学的性質

非電解質溶液ではその成分の組合せによって異なった性質を示すが,ふつう次のような相互作用の立場から論じられる。

(1)理想溶液ideal solution 混合した場合に,熱変化や体積の変化がない仮想的な溶液である。すべての溶液はその濃度が十分に希薄な場合に理想溶液に近い性質を示す。しかし溶質と溶媒の分子の大きさが等しい場合や化学的によく似ている場合(たとえば同位体混合物とか,クロロベンゼンとブロモベンゼンとの混合物など)は,単に濃度が希薄な場合だけでなく,すべての濃度範囲においてこの溶液は理想溶液に近い性質を示す。このような溶液を完全溶液perfect solutionという。理想溶液を定義する場合に熱力学的な表現を用いると次のようになる。成分1,2,……,iからなる溶液の内部エネルギーをUとし,それぞれの成分のモル数をn1n2,……,ni,内部エネルギーをU1U2,……,Ui(以下のHiVi等についても同様)とすると,内部エネルギー変化⊿Uは0である(⊿U=0)。すなわちU=ΣniUi。同様に混合熱が0である(⊿H=0)から系のエンタルピーHH=ΣniHiである。また混合の体積変化が0(⊿V=0)であるから系の体積VV=ΣniViとなる。別な表現をすれば,各成分のそれぞれの値UiHiViと系全体の量UHVとの間には加成性が成り立つといえる。すなわちモル数をかけた項,たとえばn1U1n2U2,……,niUiの単なる加算で系の全体の量,たとえばUが表される。さらに混合のエントロピー変化⊿Sは,理想気体における場合と同様に,⊿S=-RΣnilnxiで表される。ここでRは気体定数,xii成分のモル分率である。またギブズの活動度(2)無熱溶液athermal solution いくつかの成分が混合によって溶液となるさいに,熱の出入りがなく(混合熱が0,すなわち⊿H=0),そのうえ混合のエントロピー変化が理想溶液における値と異なる(⊿S≠-RΣnilnxi)溶液をいう。理想溶液の場合と異なり,成分の分子の相互作用が非常に似ているにもかかわらず,大きさが異なる場合に無熱溶液となる。たとえば臭化エチレンと臭化プロピレン溶液などがその例である。

(3)正則溶液regular solution いくつかの成分を混合して溶液をつくるさいに,熱の出入りがあり(混合熱が0ではない。⊿H≠0),しかも混合のエントロピー変化が理想溶液の場合と同じ(⊿S=-RΣnilnxi)である溶液をヒルデブランドJ.H.Hildebrandは正則溶液と定義した(1929)。実在溶液を扱うさいに,化学的な相互作用,会合などの分子間相互作用がない溶液については,この定義による条件を近似的に満たす場合が多く,ベンゼンと四塩化炭素とからなる溶液はその例である。

(4)高分子溶液polymer solution 溶質が高分子化合物である溶液。溶媒が水である場合は水溶性高分子溶液water-soluble polymer solutionという。低分子化合物の溶液の性質とは異なる傾向の物理的性質(熱力学的性質としては蒸気圧降下,浸透圧,凝固点降下など,輸送現象などに関する性質としては粘性,拡散,沈降など,光学的性質としては流動複屈折,光散乱など)がみられる。

(5)界面活性剤溶液surfactant solution ある種の物質(たとえばアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)を液体に溶かすと,その溶液の表面張力が著しく減少する。このような物質を可溶化solubilizationまたは溶解化といい,このような溶液を可溶化溶液solubilized solutionという。

 なお,低融点の合金や常温においては固体であるが高温で融解した状態では液体または溶液となるものに溶融塩と液体合金がある。溶融塩(融解塩)fused saltは電解質を加熱して融解し,液体状態にした混合系で,イオン伝導,電気分解などの現象を示し,この系も一種の電解質溶液とみなすことができよう。液体合金liquid alloyは低融点の金属,合金を溶融したもの。たとえばナックと呼ばれるカリウム-ナトリウム合金は融点-12.5℃で,原子炉冷却材として用いられている。最近は低融点合金のみでなく高融点の各種の合金溶液についても研究が進み実用にも供されている。

溶液の性質

溶液の性質は平衡状態における性質と非平衡状態における性質に大別される。(1)平衡状態における性質 換言すれば熱力学的性質である。溶液の性質を調べるさいには温度,圧力などの必要な条件を一定に保ち,変化がもはや生じない状態,すなわち平衡に達した状態において行う。具体的には,蒸気圧降下,沸点上昇,凝固点降下,浸透圧などである。これらの現象は溶液では一般にみられるが,とくに希薄溶液においてのそれらの変化量は,溶媒が決まっていれば,溶質の種類によるのではなく,どれだけの量(モル数)の溶質が単位量の溶媒に溶けているかで決まることが実験的にも確かめられており,さらに熱力学的にも証明される。したがって,このような物質の種類によらない不揮発性物質の希薄溶液の性質を束一的性質colligative propertyという。これらの束一的性質を利用して分子量を求めることが可能である。濃度が希薄であると限る理由は,これらの束一的性質が〈分配律の応用である。(2)非平衡状態における性質 拡散,粘性,電気伝導などに関する性質である。溶液中の溶質や溶媒の拡散,溶液の粘性や電気伝導に関する性質についても実験的,理論的に研究がなされている。

橋谷 卓成
平凡社 世界大百科事典

溶体

均一な相からなる混合物。均一な相が気体である場合は混合気体,液体の場合は固溶体という。ただし,混合気体は条件(低温においてとか,成分の分子量の差が大きいとか)によって,不均一になる場合もありうる。一般に混合物は,各成分に分離する場合に,外からそれほど大きなエネルギーを加えないで容易に分離できるもの(たとえば,ふるいやフィルターで分けるとか,弱い遠心力をかけるとかだけで分離できるもの)と,かなりのエネルギーを外から加えて(たとえば加熱するとか強い遠心力をかけるなど)はじめて分離できるものとに分けられる。前者については不均一,後者については均一またはほぼ均一であるということができる。

橋谷 卓成