平凡社 世界大百科事典

ソネット

ヨーロッパの抒情詩における伝統的な詩型の一つ。小曲もしくは十四行詩と訳される。語源は不明だが,おそらく〈小さな歌〉の意で,民間歌謡を起源とするらしいが,13世紀末ころからイタリアで定型詩として確立された。ダンテは《新生》の中で初期のソネットの作例を示すが,とりわけブラウニングの《ポルトガル女のソネット》が名高い。ほかに16世紀には,イタリアではミケランジェロ,スペインではボスカン,ポルトガルではカモンイスらがこれを愛用した。ドイツではゲーテらの作例があり,20世紀に入ってはリルケの《オルフォイスにささげるソネット》がある。

 ソネットの形式は,等韻律の詩句を四行詩2連,三行詩2連の順に並べるもので,脚韻はABBA,ABBA,CCD,EDE(またはEED)と配置するのが最も厳密な形とされ,ボアローが〈完璧なソネ一編は長詩に匹敵する〉と述べたほどの圧縮洗練された形式美を示す。また最後の1行には,一編の結びとして,とりわけ鮮やかで水際だった詩句が求められる。しかし西欧の詩としては比較的短い形式なので,実際には幾編もの連作として発表されることが多い。初期のイタリアではABBA,ABBA,CDC,CDC(またはCDE,CDE)の韻が用いられた。またシェークスピアのそれは,ABAB,CDCD,EFEF,GGの形をとり,四行詩3節のあとへ二行詩1節を添えたようになっている。

 日本では明治末に蒲原有明や薄田泣菫がヨーロッパ詩の影響下にソネットを試み,みごとな形式美をもつ作品を残したが,脚韻配置までは手が届かなかった。昭和期には立原道造のソネットが名高いが,これは事実上抒情詩

安藤 元雄