平凡社 世界大百科事典

炭化水素などの有機物より不完全燃焼あるいは熱分解によって生じた黒色無定形の微粉末物質で,その成分は大部分が炭素であり,そのほか若干の酸素および微量の窒素,水素を含んでいる。同時にその表面の顕微鏡的状態は原料や生成条件ないし製法により異なり,単なる炭素微粒とは異なっている。すすは化学的組成としては工業的製品であるカーボンブラックと変わることはないが,すすという語感にはそのような工業的製品と区別して,火のあるところに自然発生的に生じた黒い炭素微粒を指す場合が多い。しかし墨の原料としてすすは古くから使用され,墨以外にも黒色顔料としても種々な目的に使用されたと思われる。そのような目的のために,原料として樹脂分の多い松材や,ナタネ油など油類を煙室で不完全燃焼させてすすをつくる。前者を松煙,後者を油煙と称している。現代でも奈良県では,このような古典的,伝統的な製法で得られたすすをにかわと練り固め上質の墨を製造している。→

新井 吉衞