平凡社 世界大百科事典

ソウル・ミュージック

1960年代を頂点とする,アメリカ黒人の現代的な大衆音楽。第2次世界大戦直後に興った公民権運動の高まりにも刺激されて,黒人の感性を洗練されたサウンドで表現する音楽形態として発展した。これをそれ以前のリズム・アンド・ブルースと区別して,ソウル・ミュージックと呼ぶ。黒人の民族意識が高まった1960年代には,黒人同士が〈ソウル・ブラザー〉と呼びあったり,黒人独特の料理を〈ソウル・フッド〉と呼んだりするのが流行していた。〈ソウル〉はスラングとして,アメリカ黒人間の共通意識,特有の資質などを感覚的に表し,ソウル・ミュージックも〈魂の音楽〉という意味に解するよりも,アメリカ黒人の自己確認のための音楽といった含みでとらえるべきであろう。

 強烈なビートとステージ・アクションで聴衆を引きつけていたリズム・アンド・ブルースがソウル・ミュージックへ転換する先駆をなしたのは,歌手でピアニストのレイ・チャールズと歌手のサム・クックSam Cooke(1935-64)である。ともに50年代後半に,ゴスペルの要素をリズム・アンド・ブルースに持ち込んだ曲をヒットさせた。クックに強く影響されたオーティス・レディングOtis Redding(1941-67)は,ジョージア州で牧師の息子として生まれ,テネシー州メンフィスで録音したレコードが63年から67年の飛行機事故による死亡の後まで次々にヒットした最大のソウル歌手であるが,ふりしぼるように力のこもった歌い方で粘ったリズムに乗る彼のボーカルは,恋の歌の場合でも教会音楽と共通した安らぎを聞く者に感じさせる。レディングに代表される南部のソウル・シンガーのこのような深みのあるスタイルを,ファンは〈ディープ・ソウルdeep soul〉と呼んでおり,それに対して北部では,デトロイトに本拠のあったレコード会社モータウンのアーティストたちに代表される洗練度の高い都会的なサウンドを特徴とし,ゴスペルの要素は薄い。

 1970年代に入って北部の洗練されたサウンドが主流を握り,ダンス音楽の比重が高まって,いわゆるディスコ・サウンドとして白人の音楽と一体化してゆき,80年代にはソウルという語はあまり強調されなくなった。

中村 とうよう