平凡社 世界大百科事典

ダイダイ

赤橙色で野球のボール大の果実がなるかんきつ類。古くから庭先で栽培され,果実はお飾りや食酢などに使われる。総状花序を成し,白色5弁の花が5月に咲く。果実は200gほどで,冬季に色づく。果皮が厚く種子も多い(約30粒,白色多胚)が多汁。酸味強く,5~6%のクエン酸を含む。3月以降す上がりし品質は劣化するが,果実はいったん緑化したのち再着色し翌年まで樹上にとどまる。

 インドのアッサムを中心とする地域が原産地といわれる。世界的に広く栽培されるが,陸路を西進したものがサワーオレンジに,東進したものがダイダイの品種群に分化した。日本には中国から伝来。記紀に記される最古の導入かんきつはダイダイであるともいわれる。一般にダイダイ(別名臭橙(しゆうとう))はカブス(蚊無須,一説に蚊燻に由来)をさす。その変種に萼が肥厚したカイセイトウ(回青橙。ザダイダイ)とフイリダイダイ(斑入橙)がある。サワーオレンジはスペインのセビリャが有名。ほかにブーケー,枝葉がギンバイカ(マートルmyrtle)ににて矮性(わいせい)で葉が小さく小果のマートルリーフオレンジ(別名シノット)などがある。近縁種に台湾の南庄(なんしよう)橙,インドのキチリー,イタリアのベルガモットなどがある。外国ではサワーオレンジの実生を台木にするが,トリステザウイルス病に弱いため近年はあまり使われない。スペインでは果実が2万tほど生産され,大部分マーマレードにされる。ブーケーの花は香水(橙花油,ネロリ油)の原料に,マートルリーフオレンジは鉢物,植木によく,イタリアでは糖果にされる。ベルガモットからは香料として精油が抽出される。日本ではダイダイが落果しにくく,新旧代々の果実が同一樹上になること,また果実が黄金色を呈することから,縁起物として正月のお飾りに用いる。なべ料理などに食酢としても利用される。マーマレードにはカブスがよい。また果実は薬用,浴湯料として知られる。昔は乾燥した果皮を蚊やりに用いた。

山田 彬雄

薬用

ダイダイの成熟果皮を橙皮という。精油を含み,その成分はd-リモネンで,そのほかにフラボノイド,ヘスペリジン,ジテルペノイド,リモニン(苦味質)が含有されている。芳香性苦味健胃薬,駆風薬,香味薬として,消化不良,胃腸炎などに用いられる。また苦味チンキ,橙皮シロップの原料とする。

新田 あや
図-ダイダイ
図-ダイダイ