平凡社 世界大百科事典

シクラメン

塊茎を有するサクラソウ科の球根植物。和名はカガリビバナ(篝火花)。かつては英名を直訳して,ブタノマンジュウともいわれた。シリアからギリシア原産で,18世紀にヨーロッパへ紹介されてから温室草花としての改良が進み,19世紀末ごろより今日見られる大輪系の品種が生まれた。基部に扁球状の塊茎があり,長柄のある心臓形葉を根生する。葉面には銀白色の模様がある。秋より春へかけて,塊茎から群がり立つ高さ15~20cmの花茎上に,5裂し裂片が反転する花を単生する。花色は赤,桃,白,赤紫,藤桃など多彩である。大輪系には平弁のペルシクムPersicum系,ちぢみ弁のフリンジFringe系,八重咲系などがあり,近年,小輪多花性のマルチフローラMultiflora系も多く栽培される。

 シクラメン属Cyclamenは小アジアより地中海沿岸地方,ヨーロッパ中部にかけ約20種ほどが分布し,園芸的にはペルシクム種の改良種のほか,C.neapolitanum Ten.,C.coum Mill.,C.atkinsii Mooreなどが栽培される。多くは温室鉢物として利用され,9月に種子をまき,本葉1枚で移植して育苗し,春に鉢上げし,順次鉢替えをして育成すれば,播種(はしゆ)翌年の11月ころより開花を始める。冬は温暖多雨,夏は高温乾燥した地中海気候域で適応分化した植物なので,晩春,開花後は乾燥休眠させるとよい。リン酸分の多い肥料を施す。耐寒力はかなりあるが,冬期は3℃以上を保つようにする。しかし,あまり暖房の効いている所はよくない。もっぱら冬に楽しむ温室鉢花として観賞され,花期が長いのが特徴である。

柳 宗民
図-シクラメン
図-シクラメン