平凡社 世界大百科事典

宇宙船

元来は宇宙空間を飛行する人工飛行物体の総称として用いられた言葉であり,海洋における船の概念を宇宙にもあてはめたものと思われるが,その定義は国や時代によって差異がみられる。過去において,ソ連(現ロシア)では小型の人工衛星に対してもこの用語が使われ,一方,アメリカではアポロ宇宙船などの主として有人のものに対して用いられていた。しかし,宇宙空間を飛行する人工飛行物体の種類が多くなるにつれ,これらの中には宇宙船とはいえないようなものもある。例えば,光の反射器のみを有する測地衛星やバルーン式通信衛星のように非常に簡単な機能をもった人工衛星は,現在では宇宙船とはいえないであろうし,高度な機能をもったものでも,静止通信衛星のように地球上の一定領域に滞在して特定の任務を遂行しているようなものは一種のステーション(基地)であり,宇宙船の与えるイメージとは異なっている。したがって,このような点からあらためて宇宙船を言い表すとすれば,宇宙空間を,その目的地に到達する必要のある任務をもって飛行する,みずから航法,制御,通信などの機能をもったものということになろう。この意味では,月や惑星を目標とする探査機がもっとも代表的なものとなり,この中には太陽系外への飛行を目指したパイオニアやボエジャー探査機も含まれる。現在の宇宙船は推進装置はごく小型のものしかもっていないが,将来は電力や原子力によって太陽系の中を飛び回ることのできるものが登場すると思われる。また,これまでの宇宙船には通常は地上から打ち上げるための大型ロケットの部分は含まれなかったが,スペースシャトルのオービターのように大型のロケット推進機能をもったものも,宇宙船の範疇(はんちゆう)に含まれるようになるであろう。

長友 信人