平凡社 世界大百科事典

やや幅広い刃床から柄が垂直ないしは鈍角状にのびる人力用農具で,耕起,土の掘りあげ,溝掘り,塊根類の掘りとりなどに使用される。中国では農耕文化

応地 利明

考古学から見た鋤

中国の新石器時代では石鏟と呼ぶ,刃先がU字形の扁平な石器があり,鍬あるいは鋤の刃と考えられる。これとともに耒(らい)と呼ぶ,刃先が二股に分かれた木製耕具も使用されたことが,殷代の遺跡での耕具痕や画像石から知り得る。同種のものは朝鮮初期金属器時代の青銅器絵画にも認められる。青銅や鉄の普及とともに各種の鏟が作られた。刃全体を金属で作り,着柄用の袋部を有する型式,あるいは木製の台部の先に着装する凹字形の鏟もあった。なお中国では〈鋤〉は除草用のクワを意味する。

 日本では弥生時代の開始期に,すでに大陸で発達を遂げた耕具が伝わったが,各種の鍬とともに刃先が円形あるいは尖がった形のスコップ型の鋤が含まれていた。これらは刃先まで木製であるが,弥生時代後期から中国の鏟の流れをくむ青銅製品や,鉄板の両端を折り返した形の鉄器が鋤にも着装された。また,5世紀中葉に朝鮮半島から伝わったU字形鉄刃先の技術によって,刃先の着装法は改良された。なお,弥生時代後期から古墳時代にかけて認められる〈ナスビ型木器〉を着柄鋤と見なす説があるが,鍬先とも考え得る。

都出 比呂志

日本の鋤

鋤と犂はともに〈すき〉と読まれる耕具である。そこで牛馬の力を利用する犂を中国から来たという意味で〈唐犂(からすき)〉といい,手と足で,ことに刃床部の肩に足をかけて土に押し込む鋤を〈踏鋤(ふみすき)〉,なまって〈ふんずき〉と呼んで区別することもある。西洋のシャベルも鋤の一種であるが,日本の在来型は鍬の刃床部と同じように,風呂と呼ばれる木製のブロックに鉄を鍛造してつくった刃先をはめこんだものである。鋤の使用は古く,稲作の伝来からまもなくと考えられるが,これは刃先も木製であった。機能や形態が分化・発達してくるのは,江戸時代中期以降である。土を起こす道具として鍬と並びあげられることが多いが,実際は耕起がもっぱら鍬でなされたのに対し,鋤の用途は限られており,排水溝をつくるというように,ただ掘るだけでなく土を持ちあげる作業に使われた。畑のうね底の土をさらうにも便利であるが,江州鋤は柄の付け根が少し湾曲しており,そのため柄と刃が同一面になく,土をすくいあげるのに便利で,江州地方の一部(現在の琵琶湖東岸)に独特の型である。鋤は農耕用だけでなく,水路や池を掘ったり,植木職人などにも広く用いられた。なお,畑地帯や焼畑では耕起にも鋤が用いられたが,柄と刃に角度をつけてつくられ,踏鍬などと呼ばれる。

堀尾 尚志
図-踏鋤
図-踏鋤