平凡社 世界大百科事典

標本

動物学,植物学,地学などの研究や教育に使うために,長期間保存できるように処理した生物の体やその一部,および岩石,鉱物などをいう。標本は乾燥標本,液浸標本,プレパラートに大別できる。岩石,鉱物,化石,貝殻などはそのまま長く保存できるが,その他のものは,生物体の全部または一部を,適当な方法で速やかに乾燥させて,保存に耐える乾燥標本に製作する。植物は水をよく吸う紙などの間にはさみ,重しを乗せて乾燥させ,腊葉(さくよう)とする。哺乳類,鳥類などの脊椎動物,大型の甲殻類などは,肉や内臓を取り去り,皮または外骨格だけを残し,その裏面に防腐剤や防虫剤を塗り,乾燥させて剝製標本に製作する。昆虫は多くは内臓を取り去り,翅を広げた展翅(てんし)標本に製作する。このほか,脊椎動物の骨格標本も乾燥標本である。液浸標本は生物の体全体,またはその一部をアルコール,ホルマリンなどに漬け脱水して保存するもので,とくに解剖用として重要である。プレパラートは微小な生物や,動植物の組織を保存するのに用いられる。

 分類学では,標本は研究上きわめて重要で,これなしには分類学がなりたたない。分類上とくに重要なのは,新しい種類の生物を発見し,それに学名をつける際(命名の際)に用いた剝製

今泉 吉典