平凡社 世界大百科事典

球面天文学

太陽,月,惑星,恒星などすべての天体を天球上にあるものと考えて,これらの位置や位置の変化を天球座標によって記述し研究する天文学の一分野である。球面天文学は天文学の諸分野の中でもっとも早期に発達した基礎的分野であり,とくにすべての天文観測に直結している。

 天球座標には観測者の地平線に固定された地平座標と,天球に固定されて天球とともに回転する赤道座標,黄道座標,銀河座標がある。黄道座標は太陽系天体の位置や運動を表すのに使われ,銀河座標は銀河系の研究に使われる。赤道座標は天球の回転と直結する代表的な天球座標である。これらの天球座標間の変換は球面天文学の基本であって,このために古くから球面三角法が発達した。しかし,近時コンピューターの普及とともにもっぱら真数計算が行われ,座標変換にはマトリックスが使われることも多い。

 天体の位置観測は地球の表面で行われるが,地球の表面は大気層の底であって地球の自転・公転のため動いている。したがって天体の光は大気層で屈折されて観測者に達するが,観測者は光行差によりその方向ともずれた方向に天体を見ることになる。こうして観測された天体の位置は真の位置ではない。見かけの観測位置に種々の要因を補正して,地球の中心,あるいは太陽の中心から見た位置を求めることが球面天文学の使命であるといってよい。球面天文学のおもな内容には,天体の出没現象,天体の地心視差(太陽系の天体のみ),大気差,光行差,惑星の視運動,恒星の年周視差,固有運動,歳差と章動,天文時系,食およびえんぺい現象などがある。

堀 源一郎