平凡社 世界大百科事典

ハダニ

ハダニ科Tetranychidaeに属するダニの総称。体色は黄色,黄緑色,橙色,赤色,赤褐色など種々である。かつては農家などで俗にアカダニといったこともあった。消化管内の食物の状態が体色に大きく影響するので,同一種でも個体により著しく色彩斑紋を異にする。一般に活動期の個体(夏型)と休眠時の個体(休眠型)とでは体色が異なる。成虫の体長は0.25~0.9mm。雌は上から見ると卵形または楕円形,雄は小型で逆三角形に近く,雌よりも淡色である。雄がいない種もある。鋏角(きようかく)の基部が融合し,ここから1対のむち状の口針がつき出ていて,口針は植物から液汁を吸収するのに用いられる。摂食時には両口針は単一の管のようになり,植物細胞の内容物は,咽頭(いんとう)ピストンの作用でこの管を通って咽頭へ送られる。親指型の触肢をもち,その末端節にある端感覚体の先から糸を出す(一部の種は糸を出さない)。英名もこれによる。ハダニは,糸でぶら下がりながら微風にのって空中を浮遊し,葉から葉へ,木から木へと移動したり,糸の網によって風雨などのきびしい気象条件から守られたりする。また,網は害敵にとって障害となり,他種ハダニや捕食者の侵入を妨げる。糸の働きは,このほかにもいろいろあるが,ハダニの種によって糸や網の使われ方はかなり相違する。ハダニは卵,幼虫,第1若虫,第2若虫を経て成虫になる(雄では第2若虫期が省略されることがある)。多くのハダニは卵から成虫になるのに好適温度(24~29℃)のもとで7~12日かかる。1年間に数回以上の世代を繰り返すものが多い。

 植物に寄生し,主として葉を加害するのでこの名があり,多くの農林業害虫を含む。日本からは約60種が知られるが,次のものはとくに重要害虫である(かっこ内はおもな寄主植物)。ミカンハダニPanonychus citri(かんきつ類),リンゴハダニP.ulmi(リンゴ),スギノハダニOligonychus hondoensis(スギ),トドマツノハダニO.ununguis(クロマツ,アカマツ,ヒノキ,モミ,トドマツ,エゾマツ,クリ),オウトウハダニTetranychus viennensis(リンゴ,ナシ,オウトウ,サクラ,ウメ,モモ),カンザワハダニT.kanzawai(寄主植物多数,チャの害虫として著名),ニセナミハダニT.cinnabarinus(寄主植物多数),ナミハダニT.urticae(寄主植物多数)。ハダニの有力な天敵の一つとしてカブリダニがある。

 なお,広義にはヒメハダニ科Tenuipalpidaeなども含めたハダニ上科Tetranychoideaのダニを指す。

江原 昭三