平凡社 世界大百科事典

脊髄腫瘍

脊髄をおさめる脊椎管内に発生する腫瘍で,脳腫瘍の場合と同様,脊髄内に発生する髄内腫瘍と,脊髄外に生ずる髄外腫瘍とが区別される。脊髄内に生ずるものは原発性のものがほとんどであり,大多数は星状膠腫(こうしゆ)や上衣細胞腫などのような神経膠腫である。これらの腫瘍は病理組織学的には良性のものであっても,手術不能のものがほとんどであるため予後はきわめて悪い。脊髄の外に生じてこれを圧迫する髄外腫瘍は硬膜内腫瘍と硬膜外腫瘍に区別される。硬膜内髄外腫瘍は,そのほとんどが神経鞘腫や髄膜腫などの良性腫瘍であり,手術的に完全に摘出することができる。これに対し,硬膜外腫瘍の多くは悪性腫瘍の転移によるもので,予後は絶対的に不良であるが,転移巣とそれによる圧迫を手術によって除去することは可能なことが多い。脊髄腫瘍の臨床症状として重要なものは対麻痺または四肢麻痺と膀胱直腸障害および感覚鈍麻である。このほかに腫瘍の存在するレベルでの脊髄症状または脊髄根症状が出現するが,髄内腫瘍では筋萎縮の形をとりやすく,髄外腫瘍では疼痛やしびれのことが多い。転移性硬膜外腫瘍では根痛の頻度が高く,また進行が週の単位で,かなり速いのが特徴の一つである。

岩田 誠