平凡社 世界大百科事典

スピネル

尖晶石ともいう。化学組成MgAl2O4の鉱物。立方晶系に属する。八面体結晶が最も一般的で,まれに六面体や十二面体結晶も存在する。赤,青,緑,茶色の透明結晶,また不透明結晶も産する。赤色の美麗なものはスピネルルビーという宝石になる。{111}を双晶面とするスピネル双晶をしばしば示す。へき開はないが裂開が見られる。モース硬度7.5~8,比重3.581。結晶質石灰岩,片麻岩,蛇紋岩,カンラン岩中に産出する。RM2X4のスピネル型構造をもつ鉱物や化合物は図に示すように,単位胞中に32個の陰イオンがほぼ立方最密充てんをしている。その隙間に64個の四面体と32個の八面体が存在し,前者の1/8,後者の1/2に陽イオンが存在する。化合物としてR2⁺M23⁺X42⁻,R4⁺M22⁺X42⁻,R6⁺M21⁺X42⁻,R2⁺M21⁺X41⁻など多種の電荷をもつイオンが存在する。またR[M2]X4の正スピネル型,M[R,M]X4の逆スピネル型,その中間型など,陽イオンの分布により多種多様な化合物がある。陰イオンにより,酸化物以外に硫化物のチオスピネル,ハロゲンスピネル,カルコゲンスピネルが存在し,30種以上の鉱物が記載報告されている。また磁性体をはじめ,多くの工業材料となり,250種ほどの合成化合物が報告されている。

山中 高光

宝石

スピネルはミャンマー,スリランカなどの主要産地において,ルビーやサファイアとともに産し,古い時代には区別することなく取り扱われていた。そのため,スピネルがルビー,サファイアの名で著名な古い財宝の中に入り込んでいる例は数多い。たとえば,イギリス王室の第1公式王冠の正面に世界第2位の大きさのダイヤモンド(カリナン第2石,317カラット)と肩を並べてセットされている歴史的に有名な〈黒太子のルビー〉や同王室所蔵の〈ティムール・ルビー〉は,実はレッド・スピネルである。スピネルの名の由来は棘(とげ)を意味するラテン語のspinaが起源であろうといわれる。またスパーク(閃光)の意味のギリシア語スピンタリスspintharisから由来したともいわれる。色は豊富で,赤,ピンク,赤紫,青,緑,紫,橙色,褐色,無色(微色を帯びる)などがあり,ときにスター効果を示すスター・スピネルの産出もある。合成スピネルは,ルビー,サファイアと同様,フランスのベルヌーイA.V.L.Verneuilによって発明された火炎溶融法によって製造されている。

近山 晶
図-スピネル型構造
図-スピネル型構造