平凡社 世界大百科事典

スピノダル分解

2成分混合系における2相分離過程の一つ。ある温度T0における混合エンタルピーが正である2成分混合系の自由エネルギーGと組成Cの曲線(図a)を考えた場合,

の点,すなわち変曲点を求め,これを2相分離曲線(図b)にプロットし,同様な操作でT0を変化させて得られる変曲点の軌跡をスピノダル曲線(ファン・デル・ワールスの命名)という。図bで2相分離曲線とスピノダル曲線との間は準安定で,スピノダル曲線の内側は不安定である。2成分混合系を高温から急冷し,スピノダル曲線の内側においた場合,2相分離が起こり,2成分が液体の場合はあまり複雑な現象はみられないが,2成分が金属のような固溶体の場合は濃度のゆらぎが生じると,時間とともにゆらぎが増大することによって分解が進行し,濃度の高い相と低い相が数十~数百Åの間隔で配列した組織が形成される。この現象をスピノダル分解という。アルニコ,キュニフェなどの永久磁石では,この過程で非強磁性の相と強磁性の相とが分散するために優れた磁性が得られている。また結晶化ガラス(ガラスセラミックス)の微細な結晶化にも,ガラス状態でのこの過程による2相分離が原因になっているものがあるといわれている。スピノダル分解に対して,濃度の大きく変わった小さい領域(核)の生成と,この領域の拡大(成長)によって進行する2相分離過程は核生成-成長過程と呼ばれる。

伊藤 邦夫
図-スピノダル分解
図-スピノダル分解