平凡社 世界大百科事典

ヘチマ

熱帯アジア,おそらくインド原産のウリ科の一年草。日本への渡来は1600年代と考えられている。茎はつる性で,巻きひげを出して他物にからみついて伸びる。葉は長い葉柄があり,葉身は30cmほどで掌状に切れ込み,表面はざらつく。花は夏から秋に,雌花と雄花が同一の株につき,花冠は径5cmの黄色で5裂する。果実は長さ30~60cmの円筒形で,外面に浅い縦溝がある。成熟すると果皮の繊維が発達してじょうぶなスポンジ状となる。春,晩霜のおそれがなくなった時期に,あらかじめ育苗した苗を移植するか,または直接種をまく。ふつう,つるを誘引して棚仕立てとするが,観賞用とする場合は日よけ棚にも利用される。若い果実は柔らかく,キュウリに似た淡白な味で,あん掛けや汁の実にして食べることができる。なかでも,古くから沖縄や鹿児島県で栽培されている食用ヘチマは,繊維の発達が少ない品種で,果実は長さ40cmほど。若い果実は甘みと香気があって柔らかい。なお,ヘチマの花落ちを酢の物などにして食することもある。元来は熱帯系のもので,東南アジアやアフリカでも若い果実が食用にされている。熟した果実を水に漬け,外皮や果肉を腐らせて洗い去り,乾かすとヘチマのたわしができる。食器洗い,浴用のほか,履物の底敷きを作るのに用いられるが,最近では石油化学製品に取って代わられて需要が減った。かつては,日本の特産として欧米へ輸出もされていた。静岡県が主産地で,達磨(だるま)およびこれから育成された品種が知られている。ヘチマの茎を地上30cmほどで切り,切り口から根圧によってにじみ出してくる液を集めたものがヘチマ水である。化粧水に使われるほか薬用にもされ,鎮咳,利尿の効があるとされる。化粧水の調製法の一例を次に示す。浸出液に炭酸マグネシウムを入れて静置するとタンパク質やその他の不純物が沈殿する。その上澄み100ml当りエチルアルコール30ml,グリセリン10ml,ホウ酸2gを加え,好みで香料とごく少量の葉緑素を着色用として入れる。

 ヘチマの1品種ナガヘチマは六尺ヘチマ,九尺ヘチマとも呼ばれ,果実は長さ1~2mになる。繊維は弱くたわしには不適で,観賞用。近縁のトカドヘチマL.acutangula Roxb.は熱帯アジア原産で,果実の表面に10本の稜があり,インドや中国で野菜として栽培されている。

星川 清親
図-ヘチマ
図-ヘチマ