平凡社 世界大百科事典

捻挫

関節の外傷の一つの型。関節に外力が加わり,それぞれの関節のもつ可動域以上の運動が強制された場合,関節包,靱帯(じんたい)など関節支持組織に断裂などが生ずるが,関節相互間には乱れのないものをいう。受傷時に脱臼を起こし,そのあと自然整復を起こしていることもあるが,この場合も,結果的にみたときは捻挫ということになる。一般に,関節運動範囲の少ない関節ほど捻挫を起こしやすく,可動域の大きな関節ほど捻挫は起こしにくく,むしろ脱臼を起こしやすい。

 受傷直後から関節に疼痛がある。疼痛の程度や持続時間はさまざまで,たとえば,ただ関節包が伸ばされたようなときには間もなく疼痛はおさまるが,関節包,靱帯などに断裂が生じたような場合には疼痛が持続する。関節を動かしたり関節に荷重をかけたりすると,疼痛が増す。靱帯が断裂したり骨折を伴っているような場合,ときとして皮下出血のための溢血(いつけつ)斑(青あざ)が生じる。靱帯断裂があると関節の異常可動性がみられることもあるが,このような異常可動性の証明は麻酔下で行い,疼痛を除き,筋肉を弛緩させた状態でみるのがよい。骨折合併の有無や異常可動性の程度は,X線写真で判定する。

 靱帯断裂その他の損傷が軽度な場合には,比較的短い期間の安静,固定で完全に治癒する。しかし関節包や靱帯の損傷が広範囲でかつ高度な場合には,初期の正しい治療によって修復が行われないと,関節の異常可動性や異常肢位を残し,関節機能障害をもたらすおそれがある。一般に関節包や靱帯が修復されるためには2~4週間かかるが,その間損傷組織が伸びた状態で治らないようにする。受傷時と反対方向に屈曲したり,機能肢位をとらせる。固定にはギプス包帯が最も確実であるが,靱帯損傷が軽度な場合には,絆創膏や弾性包帯による固定,サポーターなどが用いられる。関節に大きな異常可動性がみられるようなときは,手術的に損傷靱帯を修復したり,合併骨折の処置などが行われる。

 捻挫の治療に関して重要なことは,〈たかが捻挫くらい〉といった安易な解釈ではなく,受傷機序からみれば〈外傷性脱臼〉と同一であることを考えて,治療期間や固定の程度は脱臼に準じて行う必要があることである。不十分な治療のために異常可動性や疼痛が遺残すると,その治療は困難なことが多い。初期治療が厳重に行われることが最もたいせつである。→脱臼

東 博彦