平凡社 世界大百科事典

想像妊娠

妊娠を切望したり,あるいは極端に恐れている女性に,実際は妊娠していないのに,妊娠性の自覚的・他覚的徴候がみられ,みずから妊娠したとの錯覚に陥った状況をいい,偽妊娠pseudocyesisともいう。このような患者では,無月経や脂肪沈着とか腸内ガスによる腹部膨満や,乳房の肥大,分泌や,乳頭,乳輪,腹壁正中線などの色素沈着の増加がみられることがある。大多数の例でつわりがみられるが,精神的原因によるものと考えられる。また胎動自覚は,腸蠕動(ぜんどう)や腹壁の筋肉の収縮の誤認によるものである。腟双合診,妊娠反応,超音波診断法(ドップラー法による胎児心音の有無)などによって確定しうる。医師から妊娠でないとの診断を受けると,各種の症状はすぐに消失するのが常であるが,精神病の女性では,自分は妊娠しているという妄想をもちつづけることがある。

加藤 順三