平凡社 世界大百科事典

安定人口・静止人口

人口の再生産要因(出生と死亡)と人口の基本構造との関係についての画期的な一般理論が,20世紀の初頭,アメリカの生物学者・人口学者死亡率)が一定であるとすると,究極においてその人口の基本構造は一定となり,したがって普通出生率も普通死亡率も一定となり,一定の自然増加率が生ずる。いいかえると,実際人口にみられる特定の出生秩序と死亡秩序のもとにおいて,究極的に生ずる人口の基本構造と人口増加のポテンシャルを表現したものである。安定人口の増加率は〈内在的〉あるいは〈真〉の増加率,または安定人口自然増加率と呼ばれる。

 安定人口の出生率,死亡率が等しく,したがって真の増加率がゼロである場合の人口をとくに静止人口という。このロトカの安定人口理論は,出生,死亡とそれぞれの役割の間の関係といった人口過程の理解に対し大きな貢献を果たした。しかし安定人口理論は,人口現象の認識において,同理論とまったく同一の基礎に立っている再生産率(ある年の出生秩序と死亡秩序が一定であるとした場合の1世代の人口再生産の度合)理論と同様,その極端な抽象性に対する批判が,とくに第2次大戦後の出生,死亡の不規則な著しい変動を契機としてあらわれてきた。→人口

黒田 俊夫