平凡社 世界大百科事典

駅馬車

一定区間を定期的に走る公共用の乗合馬車。駅馬車の出現のためには,道路の改善と道路網の発達,馬車の車体の改良,旅行客の増加といった条件が必要であったが,すでに17世紀にはロンドンやパリで駅馬車が運行されていた。18世紀のイギリスでは道路建設が進み,国内に道路網がはりめぐらされ,ロンドンから地方へ向け週なん百便もの駅馬車が出発した。アメリカでも,18世紀末には東部大西洋岸地方で駅馬車が運行されていたが,19世紀に入ってからいっそうの発展をとげた。とりわけ,ニューハンプシャー州コンコードのアボット・ダウニング社が製造したコンコード馬車は,堅牢さと乗りごこちの良さとで有名であり,駅馬車の発展と切り離すことができない。赤,青,黄,緑,黒などのペンキで塗装され,9名の乗客と郵便物をのせ,東部と西部をつなぐ駅馬車は,フロンティアにおける〈文明,知性,政府,保護の象徴〉(ホレース・グリーリー)であった。東部では19世紀中ごろまでに鉄道に取って代わられたが,ミシシッピ川以西にあっては駅馬車が唯一の交通手段であった。最も有名なのはバターフィールド社の駅馬車で,セント・ルイスとカリフォルニアを22日間の旅程,200ドルの運賃で結んだ。1869年,大陸横断鉄道の完成で駅馬車の時代は終わった。

岡田 泰男
平凡社 世界大百科事典

駅馬車

アメリカ映画。1939年製作。映画史上もっとも有名な西部劇であり,ジョン・アクション映画史上不朽の名場面となり,しばしば他の映画に引用されている。なお,オーソン・ウェルズが《市民ケーン》を撮る前に,1ヵ月間毎晩《駅馬車》を見て映画の技法を学んだというエピソードがある。

岡田 英美子+広岡 勉