平凡社 世界大百科事典

スタグフレーション

高い失業率に代表される不況と,インフレーションとが共存する状態を指す。景気の低迷を意味するスタグネーションstagnationをインフレーションと結びつけて造られた言葉である。なおスランプフレーションslumpflationも同義である。1973年秋の第1次石油危機のあと,不況とインフレの二重苦に悩むアメリカ経済を指してマスコミが盛んに用いたが,現在では経済学用語として定着している。

 第2次大戦後のアメリカ経済は,1950年代後半の合理的期待形成仮説を生んだ。

 現在ではスタグフレーションは,期待インフレ率の上昇により起こるものと考えられている。すなわち短期的には期待インフレ率一定のもとで実際のインフレ率と失業率との間に負の相関関係(フィリップス曲線)が存在する。しかし実際のインフレ率が期待インフレ率を上回ると,後者は上方修正され,その結果フィリップス曲線も上方にシフトする。つまり,財政,金融両政策により有効需要を高い水準に維持し,失業率を人為的に抑えておこうとすると,期待インフレ率が上昇してくる。いったん期待インフレ率が高くなると,インフレ抑制のために強い引締政策を実施しても,失業率が増えてもインフレ率は与えられたフィリップス曲線に沿って緩やかにしか低下しない。引締策を堅持すれば,現実のインフレ率が期待インフレ率を下回る状態が続くことにより,期待インフレ率がしだいに低下していく。しかしその間,高い失業率と水準としてはなお高いインフレ率とが共存する,スタグフレーションの状態がしばらくは続くことになると考えられる。

小椋 正立