平凡社 世界大百科事典

標準船

船は1隻ずつ異なる仕様と設計に基づいてつくられるのがふつうであるが,これに対し数十隻,数百隻と同一の仕様と設計で建造された船をとくに標準船と呼ぶことがある。自動車や航空機などの交通機関が通常幾種類かの同一の型式によって大量生産されるのに対し,船の場合1隻ずつ異なったものが建造されるのは非常に特徴的である。しかし,標準化や量産化に対する適不適は,船の場合にも本質的に相違があるわけではなく,同じ型に対する需要隻数の多少と,標準化してつくったとき,1隻ごとにつくった場合に比べてどのくらい建造コストが下がるかという二つの面から決まってくる。したがって,例えば戦時のように一時に非常に大量の船が求められれば,第2次世界大戦中の日本の第1次,第2次および第3次標準船やアメリカのリバティ船,これを改良したビクトリー船などのように戦時標準船が多数建造されることもありうる。前者の日本の標準船は兵員や軍需物資を輸送するための船を短期間に大量に建造する必要から船型を数種類に標準化してつくった船で,低仕様船の代名詞のようになっていた。リバティ船も日本の戦時標準船と同じ目的で建造されたものであるが,アメリカでは大量建造方式として従来のリベット工法に代わる溶接工法やブロック建造法などの新しい建造技術を開発し,著しい生産力により優秀な船を大量に建造した。しかし一般には,商船では航路や港湾,積荷の条件などがまちまちで,標準化するほどの隻数が同時に得られず,また大量生産によるコストダウンも船の性格と建造法のうえから大きくは期待できないために,1隻ずつ異なったものになっている。ただし,特定の商船がわりあい多数求められる場合も皆無ではなく,戦後の日本でも標準貨物船のシリーズが建造された例がある。また,大型タンカーやばら積船などは基本形態としてみれば,ほとんど代表的なサイズごとに種類が限られており,いわば準標準船とみなすこともできるであろう。

赤木 新介