平凡社 世界大百科事典

星団

銀河の中で,ほぼ同時に生まれたたくさんの恒星が,相互の重力によってひきあってつくっている恒星の集団をいう。星団は距離が遠くなると,小さい望遠鏡で眺めただけでは星雲や銀河との区別が困難になるばかりか,すい星と見まちがえられることさえある。星団は,メシエのカタログ(M)やドライヤーのカタログ(NGC)の番号で,ヘルクレス座の球状星団M13,ケフェウス座の散開星団NGC188などと呼ばれることが多い。銀河系の中の星団は,〈球状星団〉と〈散開星団〉に分けられる。また,星団ほど密ではないが,物理的性質の同じ星が空間的に集まっている場合をアソシエーションと呼んでいる。

 太陽から近距離にある星団においては,個々の恒星の明るさ,運動などを詳しく研究して,星団の進化のようすを調べることができる。太陽から遠距離にある星団においては,星団を全体として一つの天体と考えて,銀河の構造と進化のようすを調べるために用いられる。銀河系内の星野の個々の恒星は距離測定の誤差によって,恒星相互の絶対光度の違いを比較することは容易でない。星団の恒星はほぼ同じ距離にあるので,恒星の絶対光度を直接相互に高い精度で比較できる。

 ヘルツシュプルング=ラッセル図(HR図)は恒星の進化のようすをあとづけて個々の恒星の質量を知り,星団の年齢を知るための手がかりを与えてくれる。HR図とは,横軸に恒星の表面温度または色またはスペクトル型をとり,縦軸に恒星の絶対光度をとった図である。若い星団の恒星の色と明るさを測定して,それぞれを横軸と縦軸に書き込んでいくと,青く明るい恒星から赤く暗い恒星まで,HR図上を左上から右下へ斜めに横切る線上に恒星が並ぶ。これを主系列という。年老いた星団のHR図では,主系列の左上の青い恒星がなくなり,右上の赤色巨星と呼ばれる恒星になる。主系列星は恒星の内部の元素組成が一様で,中心の熱核反応によって熱の供給が行われている恒星である。恒星の中心に核反応の生成物がたまって,その外側で核反応が進むようになると赤色巨星になる。

 銀河系の形成期の元素組成は重量比にして水素が約80%,ヘリウムが約20%で,その他の元素はごく少ないのでまとめて金属元素と呼ばれる。銀河系の形成は,宇宙の温度の下降に伴って圧力の低下によって起こった銀河尺度の空間における質量の重力分裂と,それに続く自己重力による重力収縮で始まった。球状星団はその銀河形成の初期に生まれた星団である。恒星が誕生して進化すると恒星の内部で生成した金属元素を銀河系の空間に放出する。大質量星が寿命を終わると超新星の爆発でさらに多くの金属元素が銀河系の空間に供給される。散開星団は,銀河円盤ができてからその中の渦状腕で生まれている星団で,金属元素を約2%含む。恒星は元素組成の差異によって,主系列の位置や赤色巨星の位置がHR図上でずれる。

球状星団

数十万の恒星が密集して,クモの子を散らしたように周囲に広がっている。ヘルクレス座の球状星団M13は角直径23分(分角)で,4等星くらいの明るさに見える。球状星団は全天に約130個が知られている。天球上に広く分布しているが,とくに全天で1割くらいのいて座の空に半分以上の数の球状星団が集中して,銀河中心のあることを示している。球状星団は銀河中心距離とともにまばらになるが10万光年のかなたにまで分布している。

 球状星団のHR図から年齢と元素組成が推定されている。年齢はいずれも100億年以上である。金属元素は太陽や散開星団などに比べて1/10から1/100と少ない。球状星団は種族Ⅱの天体の典型とされている。種族Ⅱの天体は銀河形成の初期に生まれた天体と考えられている。

 球状星団の内部では恒星は秒速2kmくらいの速度で相互にすれ違い運動をして運動エネルギーの交換をしているので,数十億年のうちにしだいに中心密度はあがり,外側にも広がっていく。

散開星団

数百の恒星が雑然と集まっているのが散開星団で,天の川に多く分布し,散光星雲を伴っていることが多い。おうし座のヒヤデス星団は130光年という近距離にあるので,宇宙の距離尺度をきめる標準光源としてこの星団の恒星が用いられている。ヒヤデス星団の明るい恒星は3.5等から4等の赤色巨星で,年齢約10億年と老齢なので大質量星はすでに進化して寿命を終わり赤色巨星と赤く暗い主系列星が残っている。それに対して,プレヤデス星団は年齢5000万年とまだ若いので主系列の青い恒星がある。

 散開星団は全天に約1000個が知られている。銀河系の散開星団の年齢は数十億年より若いいろいろの年齢のものがあり,現在も,オリオン星雲などで生まれている。散開星団は銀河系の円盤部が形成されて以来,渦状腕の衝撃波で圧縮された分子雲の一部分から次々と生まれている。→散開星団

石田 蕙一
図1~図2
図1~図2