平凡社 世界大百科事典

状態密度

量子力学的な物理系の諸性質はその系の固有状態によって規定され,固有状態は固有のエネルギーをもつ。状態密度とはエネルギーの単位の大きさ(例えば1eV)当りの固有状態の数である。自由度の大きい系では,固有状態の総数が非常に大きく,固有エネルギーはほぼ連続的に分布するので,状態密度もエネルギーの連続関数とみなすことができる。状態密度は巨視的な大きさをもつ系の物性を量子力学的に記述するのにきわめて重要な概念である。固体中の電子の状態密度が0となるエネルギー領域(エネルギーギャップ)のあらわれ方によって,金属,絶縁体,半導体などの電気的性質の著しい差が生ずる。また,金属の電子比熱や磁化率は伝導電子の状態密度のフェルミ準位における値に比例し,超伝導の臨界温度も同様な状態密度によって決定される。固体からの電子放出スペクトルは,固体中の電子の状態密度曲線と密接な関係にある。巨大分子や固体を構成する原子の基準振動(フォノン)についても振動の状態密度を考えることができ,この量は比熱,赤外吸収,ラマン散乱などを決める重要な因子となる。

鈴木 勝久